基本知識

口で測った体温は正確ではない|口腔温・舌下温で熱中症の判断はしない

口体温計1

体温を測ることができる体の部位はたくさんあります。「口」「耳」「おでこ」「こめかみ」「わきの下」「食道」「直腸」などなど。

口・耳・こめかみ・わきの下などで測定できる体温計は薬局ですぐに買えますし、誰でもすごく簡単に、しかも素早く体温を測定できます。逆に食道や直腸で体温を測定するには、高価な専用の体温計が必要であるとともに(医療従事者でないと購入はできません)、医者や看護師でなければ測定できません。

ですが、熱中症で一番重度な「熱射病」を判定するために必要な体温は、私達が簡単に素早く測ることができる口や耳やわきの下で測定された体温ではなく、直腸で測定された体温です。

今回の記事では、私達の多くが体温を測定している「口」で測った体温と、正確な深部体温を測定できることが研究で明らかになっている「直腸」の体温の差を比べたシステマティックレビューの結果を紹介します。

システマティックレビューとは、あるテーマに関する信頼できる研究論文を集めて、それらの研究結果の傾向をまとめたものです。メタアナリシスとともに、エビデンスレベルが最も高い研究デザインです。


>>今回の参考文献はこちらです。

口と直腸の体温スクショIs Oral Temperature an Accurate Measurement of Deep Body Temperature? A Systematic Review
口で測定された体温は深部体温を正確に測定できる?というテーマのシステマティックレビューです。Journal of Athletic Training より2011年に発表されています。

【結論】口で測定した体温から深部体温を推測することはできない

口体温3

今回の記事の結論です。全部で16の研究論文が集められた結果、口体温計で測定された体温から正確な深部体温を推測することはできない、ということが示されました。

特に運動中など、深部体温が上がっている状態であればあるほど、口で測定された体温と深部体温の差は広がります。深部体温が40℃近い状態のとき、口で測定された体温は38℃ほどで表示されてしまうことがあります。

熱中症のケア・処置を行う際、深部体温が38℃の人に対する処置と、40℃の人に対する処置は全く違います。特に深部体温が40℃の人に対して、38℃だと思って対処してしまうことは、最悪の場合命に危険が及びます。くれぐれも熱中症の処置の際に、口で測定した体温を信用するのはやめましょう。

口で測定された体温は直腸で測定された深部体温よりも低く出る

体温計口直腸

運動などをしていない安静時に、口と直腸で測定された体温を比べるとその差は「マイナス0.5℃±0.3℃」という結果が出ました。これはつまり、直腸で測定された正確な深部体温が38℃である場合、口で測定されると「37.2℃〜37.8℃」あたりで出てくる、ということを意味します。

運動中や、お風呂・水風呂などに入ってるときなど、体温が刻々と変化しているときの、口と直腸で測定された体温も比較されました。結果は「マイナス0.58℃±0.75℃」でした。安静時よりも出てくる体温の差に広がりがあることがわかります。直腸で測定された体温が38℃である場合、口で測定された体温は一番差が広がると36.7℃と出てしまうことがあるということです。38℃あるのに、36.7℃と出てしまうって、ちょっと怖くないですか?

多くの信頼できる研究論文でも「口で測定された体温は信用するな」と示されている

NATAACSMスクショ

熱中症ドットコムで何度も参考文献として登場している米国アスレティックトレーナー協会(NATA)のPosition Statementには「アスレティックトレーナーは、運動中や運動後に口で測定された体温は、深部体温ではないため信用すべきではない」と示しています。

さらにアメリカスポーツ医学会(ACSM)のPosition Standにも「口で測定された体温は、熱疲労と熱射病を区別したり診断するために使われるべきではない」と示しています。

熱中症に関する研究論文として代表的な2つの論文で示されていることからも、口で測定された体温で、熱中症の判別やその他の病状との区別をすることはやめましょう。

口で測定された体温が正確ではない理由

体温呼吸環境

なぜ口で測定された体温は正確ではないのでしょうか? 今回の参考文献で示された理由は以下の4つです。

  • 測定する体温計が当たる場所が毎回変わる
  • 口で体温を測定する前に飲み物を飲む
  • 呼吸(温かい・冷たい空気を吸う)
  • 気温(周りの空気の温度)

口で測定する体温は「舌下温(ぜっかおん)」とも呼ばれることがあるように、体温計を舌の下に当てて測定します。その際に当てる場所が、測定するたびに毎回微妙に変化します。この微妙に変わってしまうことが、不正確な体温になってしまう理由の1つです。

さらには、体温を測定する前に飲み物を飲むことで、測定されて出てくる体温が変化してしまいます。ちょっと冷たい飲み物(温かい飲み物でも)を飲んだだけで変わってしまう体温は信用できませんね。

同じように、呼吸をする際に口に入ってくる空気の温度や、口の周り・顔の表面に触れる空気の温度によっても、口で測る体温に影響を与えてしまいます。

まとめ

今回は「口」で測定された体温と「直腸」で測定された体温を比較しました。前回書いた記事「運動中に耳で測った体温は信用するな!深部体温とは1℃以上も差があるかも」でお伝えしましたが、口で測定された体温も耳と一緒で「体の表面の体温」であり、深部体温とはまったく違います。そのことをしっかりと理解した上で、特に運動中に口で体温を測定する場合は「あくまで参考にする」程度として考えましょう。

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About the author

ATSUSHI

2013年からBOC−ATC(米国公認アスレティックトレーナー)として活動中。現在は外資系企業ビル内フィットネスセンターで運動指導・健康指導を行うとともに、ストレッチポール公式ブログの記事執筆や、GAP英語勉強会講師なども行う。

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熱中症ドットコム管理人

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ATSUSHI(山口淳士)。米国公認アスレティックトレーナー(BOC-ATC)。外資系企業内のフィットネスセンターで健康指導・運動指導を行う。その他、ストレッチポール公式ブログでの記事監修や、GAP英語勉強会の講師なども。

 

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