もしあなたが部活動の顧問の先生であったり、スポーツチームの監督やコーチであったり、運動の指導者であった場合、その運動やスポーツを教える子供や生徒の中で、誰が熱中症になりやすいかがあらかじめわかったら、より予防をしやすいと思いませんか?

事前に熱中症のリスクファクターを持っている人を見極めておくことによって、あらかじめ対処することができ、未然に熱中症による事故を防ぐことができます。

今回は、熱中症になりやすい選手を見極めるために作られたスクリーニングツール「Heat Illness Index Score(HIIS)」を紹介します。

 今回の参考文献では、スクリーニングツールとしてこのHIISがどれくらい信頼できるのかが調べられました。結果「もっと改良すべき」という結論となりました。ですが、熱中症を予防するにあたってとても参考になる情報だと私は思うので、紹介させていただきます。

>>今回の参考文献はこちらです。

HIISスクショ

Development of a Heat-Illness Screening Instrument Using the Delphi Panel Technique

熱中症スクリーニングツール(=Heat-Illness Screening Instrument:HIIS)が作成され、その正確性を高めていった研究です。

 

熱中症になってしまう原因とは?

アメフト防具リスクファクター

熱中症になってしまう原因というのはたくさんあります。そんな原因(=リスクファクター)を知っておくことで、それに該当する場所での運動や、該当する特徴を持つ人・選手がいた場合に、あらかじめ熱中症の予防をすることができます。リスクファクターには「外的なもの(=環境など)」と「内的なもの(=その人自身に原因があるなど)」があります。

熱中症になってしまう外的な要因(=Extrinsic Risk Factors)

まずは外的要因から。

  • 暖かい/暑い/湿度の高い場所での運動
  • 防具や厚手のユニフォームを身につけての運動
  • 運動や身体をずっと動かしっぱなしで休憩をとらない
  • 水分補給をする場所・時間がない
  • 休憩できる日陰や涼しい場所が近くにない

これらに当てはまるような状況・場所・環境で運動やスポーツを行ったり、長時間の仕事をすることは、熱中症になるリスクが高くなります。

熱中症になってしまう内的要因(=Intrinsic Risk Factors)

続いて、内的要因です。

  • 以前に熱中症になったことがある
  • 普段運動をしていない(=運動不足・心肺機能が低い・フィットネスレベルが低いなど)
  • 肥満
  • 暑熱馴化ができていない(=身体が暑さに慣れていない)
  • 脱水状態である(=身体に水分が足りない状態)
  • 電解質が足りない
  • 睡眠不足
  • 多少体調が悪くても気合いで乗り切れる!俺は(私は)大丈夫!と考えがちな人
  • モチベーションが高すぎる/熱中しすぎている
  • 薬やサプリメントの使用

外的要因と同じく、これらに1つでも多く当てはまる人ほど、熱中症になりやすい人と言うことができます。

 

熱中症スクリーニングツール|熱中症になりやすい人を見極める10個の質問

問診スクリーニング

それではここから「熱中症スクリーニングツール(Heat-Illness Screening Instrument)」を構成する10個の質問を紹介していきます。それぞれの質問の答えによって0点〜4点の点数が加算され(0点=リスク低、4点=リスク高)、全部の質問の合計点数が「30〜44点」もしくは「3つ以上の質問で4点をとった」であれば「熱中症ハイリスク(=High Risk)」となります。合計点数が「15〜29点」であれば「熱中症リスク中程度(=Moderate Risk)」、「0〜14点」であれば「熱中症リスク小(=Low Risk)」と分類されます。

トレーナーの方はもちろん、部活動の顧問の先生やマネージャー、スポーツクラブの監督やコーチ、子供に運動指導をする方は、以下に紹介する質問を子供・選手たちにして、記録しておきましょう。これらの質問をして記録しておくことで、誰が熱中症になるリスクが高いのかをあらかじめ知っておくことができます。

1)以前、熱中症になったことはありますか?

一度でも熱中症になったことがある人は、熱中症になりやすくなります。よって、まずは「熱中症になったことがあるか」をチェックします。

もし答えが「イエス(=過去に熱中症になったことがある)」であれば、1−1)の質問に続きます。もし一度もなったことがないのであれば、質問1の点数は「0点」となり、質問2へ進みます。

1−1)過去に何回熱中症になったことがありますか?

もし過去に熱中症になったことがある場合、何回なったことがあるかを確認します。何回もなったことがある人は、再び熱中症になるリスクが高いです。

1−2)一番最近なった熱中症はいつですか?

もし過去熱中症になったのが1回であれば、それがいつ起きたのか?もし過去2回以上熱中症になったことがある場合は、一番最近熱中症になったのはいつだったでしょうか?最近であればあるほど、再び熱中症になってしまうリスクは上がります

1−3)熱中症になってしまって、どれくらいの期間休んでましたか?

熱中症になってしまったとき、ドクターやトレーナー、もしくは顧問の先生や保健室の先生などに診てもらうかと思うのですが(できればちゃんとドクターに診てもらいましょう)、そのとき何日間くらい休んだでしょうか?熱中症が重度であればあるほど休む期間が長くなりますね。

もし熱中症になった際にドクターに診てもらった場合、その人がなった熱中症の種類が分かると思います。もし分かれば、その熱中症の種類によって、以下のように点数を分類します。

  • 0点=熱中症になったことがない
  • 1点=脱水症状
  • 2点=熱けいれん
  • 3点=熱疲労
  • 4点=熱射病
 もしなんの熱中症になったのかわからない場合は、熱中症によって練習をどれくらい休んだかを基準にしましょう。熱中症になったその日のうちに練習に復帰した(=数時間のみ休んだ)のであれば1点。もし1日から数日練習を休んだのであれば3点。熱中症が原因で入院をした場合は4点となります。

 

2)普段何時間寝ますか?(睡眠時間)

睡眠時間が少ないと、熱中症になるリスクは上がります。子供たち、選手たちの普段の睡眠時間を知っておきましょう。

2−1)先週、何日間クーラーをつけないで寝ましたか?

ちょっと変わった質問であるとともに、もしかしたらみなさんが思っていることと逆になるかもしれませんが、クーラーをつけないで寝ると、夜必要以上に汗をかいてしまい、脱水症状が進んでしまいます。よって、夏の暑い日はなるべくクーラーはつけて、部屋を快適な温度(=寒すぎず、汗をかかない温度)にして寝るようにしましょう

  • 0点=0〜1回(=ほぼ毎日クーラーをつけて寝た)
  • 1点=2回
  • 2点=3回
  • 3点=4回
  • 4点=5回以上(=1週間のほとんどクーラーをかけずに寝た)
 必ずしもクーラーでなくても、寝室を快適な温度にして睡眠をとっていれば問題ないです。

 

2−2)先週、何日間普段の睡眠時間よりも少なかったですか?

最初に普段の睡眠時間を聞きました。その睡眠時間を基準にして、先週の何日間、その睡眠時間よりも少なかったでしょうか?

  • 0点=0〜1回(=ほぼ毎日普段の睡眠時間寝れた)
  • 1点=2回
  • 2点=3回
  • 3点=4回
  • 4点=5回以上(=先週はほぼずっと睡眠時間が短かった)
 「先週」というのがポイント。「昨日」だけではなく、先週1週間の睡眠時間を考えてみましょう。

 

3)先週、熱が出たり、消化器官系の問題はありましたか?

なんとなく分かるかと思いますが、体調が悪いと熱中症になりやすいです。特にここでは「発熱」と「消化器系の問題(嘔吐・下痢など)」を挙げています。これらは脱水症状に繋がるため、チェックしておきましょう。

  • 0点=何の病気もしていない
  • 1点=1日以下
  • 2点=2日間
  • 3点=3日間
  • 4点=4日以上(=1週間に4日以上熱が出ていたり下痢などをしていた)

4)今のモチベーションはどれくらいですか?

モチベーションも、熱中症に関連しているようです。そしてこれも意外かもですが、モチベーションが高いほど熱中症になりやすいようです。頑張りすぎる人ほど、体調が悪くても我慢したり、気合いで乗り切れる!と考えてしまうようですね。

  • 0点:モチベーションが全くない。試合やりたくない
  • 1点:日によってモチベーションがあったりなかったり
  • 2点:ほとんどの日モチベーションは高め
  • 3点:ほとんどの日かなり高いモチベーションを持っている
  • 4点:常にかなり高いモチベーションを持っている

5)過去3ヶ月で、あなたの心肺トレーニングの強度や長さはどれくらいでしたか?

ここから、普段のトレーニングについての質問になります。基本的に、フィットネスレベルが低い人(=運動不足の人)ほど熱中症になりやすいです。

「心肺トレーニング」とは、有酸素運動やインターバルトレーニング、さらには筋力トレーニングなどを指します。もう少し具体的に言うと、「脈拍が上がるようなトレーニング」のこと。「脈拍が上がっている=心臓が頑張っている」ということ。これによって心肺機能が強くなっていきます。

そして、心肺機能が鍛えられている人ほど、熱中症にはなりづらいということになります。

  • 0点=1週間に90分以上の高強度トレーニングを行なっている
  • 1点=1週間に30〜90分の高強度トレーニング
  • 2点=1週間に30〜90分の中強度トレーニング
  • 3点=1週間に90分以上の低強度トレーニング
  • 4点=1週間に90分以下の低強度トレーニング or 全く運動をしていない
 【強度の考え方】「低強度=ラク:ゆっくり歩く・快適なスピードで歩くなど」「中強度=ややきつい:疲れは感じるけど続けることはできる」「高強度=かなりキツイ:かなり疲れる・長い時間はそのペースを保つことはできない・全力を出している」

 

6)外でトレーニングを行う際の時間帯やコンディションは?

これは「暑熱馴化(=身体が暑さに慣れているかどうか)」のチェックです。普段から暑い環境下で運動をしている人は、身体が暑さに慣れているため、熱中症にはなりづらい身体になっています

  • 0点=75%以上のトレーニングは、朝10時〜夕方16時くらいの気温・湿度ともに高い時間帯にトレーニングをしている外で行なっている
  • 1点=50〜74%のトレーニングは、朝10時〜夕方16時くらいの気温・湿度ともに高い時間帯にトレーニングをしている外で行なっている
  • 2点=49%以下のトレーニングは、朝10時〜夕方16時くらいの気温・湿度ともに高い時間帯にトレーニングをしている外で行なっている
  • 3点=50%以上のトレーニングは朝10時前、もしくは夕方16時以降の気温・湿度ともに高い時間帯にトレーニングをしている外で行なっている。もしくは朝10時から夕方16時の気温低め、湿度低めの時間帯に行なっている
  • 4点=49%以下のトレーニングは気温低め、湿度低めの環境で行なっている。もしくはクーラーが効いた環境でトレーニングをしている
 【気温・湿度の基準】「気温が高い=気温30℃以上」「湿度が高い=68%以上」「気温低め=気温20〜29℃」「湿度低め=68%以下」

 

7)現在、薬やサプリメントなどは摂っていますか?

「熱中症になってしまう内的要因」のところでも出てきましたが、薬やサプリメントの摂取は、熱中症になるリスクを高くする可能性があります。特に以下に挙げたものはチェックしておきましょう。

風邪薬 ぜんそくの薬 アレルギーの薬(花粉症など) 利尿剤 クレアチン
アミノ酸(サプリで) アルコール エナジードリンク

ここに挙げたもの以外で摂っている薬やサプリメントがあれば、しっかり記録しておきましょう。

点数は、これらの薬やサプリメントを摂取する頻度によって変わります。

  • 0点=全く摂っていない or 1日に1つ以下
  • 1点=1日に2つ
  • 2点=1日に3つ
  • 3点=1日に4つ
  • 4点=1日に5つ以上

8)水分補給はこまめにしていますか?

今回の参考文献では、しっかりと「尿比重(=Urine Specific Gravity)」を専用のツールで測定し、身体の水分補給レベルを知りましょうとなっています。

ですが、なかなか尿比重を測定できるツールがある場所や、使うことができる人は周りにいないと思います。しかし、普段の水分補給の量は熱中症の予防に不可欠なことです。よってこの項目は、文献で紹介された点数の分類方法ではなく、私が普段行う方法を紹介します。

  • 0点=体重1kgあたり60mLの水分を毎日補給している
  • 1点=体重1kgあたり30〜59mLの水分を毎日補給している
  • 2点=体重1kgあたり30〜60mLの水分を週4日以上は補給した
  • 3点=体重1kgあたり30mL以下の水分補給量である
  • 4点=体重1kgあたり20mL以下の水分補給量である
 運動・スポーツ中に補給する水分の量とは別で、普段の生活で「体重1kgあたり30〜60mL」の水分を補給することが理想と言われています(例. 体重50kgの人は「1500mL〜3000mL」の水分を1日で補給するべき)。

 

9)あなたのBMIは?

「肥満」は熱中症のリスクファクターの1つです。今回の参考文献では「BMI」を指標の1つとしています。

  • 0点:BMI20未満
  • 1点:BMI=20〜24.9
  • 2点:BMI=25〜29.9
  • 3点:BMI=30〜34.9
  • 4点:BMI35以上
 今回の参考文献では「BMI Calculator」というサイトを使用して、アメリカ人全体の中で自分はどれくらいの肥満度かを元に0点から4点を振り分けています。ですがそれは日本人には当てはまらないと思い、私がBMIごとに点数を割り振っています(=文献とは点数のつけ方が異なります)。

 

10)VO2maxランテスト

最後は、VO2maxランテストを行って、選手のVO2maxレベル(=最大酸素摂取量)を測定します。今回の参考文献で紹介されている方法はとても簡単です。選手には「12分間」走ってもらうだけ。12分間で何メートル走ることができたかを記録します。そしてその距離を、以下の式に当てはめて計算します。

(【走った距離(メートル)】ー 504.9)÷ 44.73

これで出た数値によって、点数が決まります。

  • 0点=Superior:52.5以上
  • 1点=Excellent:46.5〜52.4
  • 2点=Good:42.5〜46.4
  • 3点=Fair:36.5〜42.4
  • 4点=Poor:36.4以下
 (例)12分間で走った距離が2500mだった場合。(2500 ー 504.9)÷ 44.73=44.6となり、これは2点=Goodに当てはまりますね。

 

結果

ここまでの質問すべての点数を足してみましょう。また、「4点」となった質問がいくつあるかも数えます。そして、以下の表が点数ごとの熱中症リスクです。

30〜44点

or

「4点」をとった質問が3つ以上

熱中症リスク高 熱中症のリスクが高い選手です。気温、湿度ともに高い日は、練習の強度や時間の長さを短くしましょう。練習中はこまめに休憩をとり、水分補給をしましょう。また、指導者は練習中も常にこの選手の様子や体調はチェックしておきます。
15〜29点 熱中症リスク中
0〜14点 熱中症リスク低
 リスク中やリスク低でも、もちろん熱中症になるリスクはゼロではありません。「こまめな休養」「こまめな水分補給」など、予防につとめましょう。

 

まとめ

以上が、熱中症スクリーニングツールの10個のチェック項目です。様々な要因が重なることで、熱中症になってしまうリスクは格段に上がってしまいます。「気温が高い」「湿度が高い」なども、あくまで熱中症のリスクをあげる原因の1つ。これらと同じように「睡眠不足」や「睡眠をとる際の環境」などもリスクを高めます。

あらかじめ子供たちや選手たちの状態を知っておくことで、未然に熱中症を防ぐことができます。ぜひ活用してみてください。

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