MyHealth.Alberta.caより

熱射病(=重度な熱中症)になってしまったときに、命を落とさないための最大のキーポイントは「どれだけ素早く深部体温を下げることができるか」です。体温を下げる方法は、氷を使ったり、シャワーを使ったり、扇風機の風に当たるなど、体温が下がるスピードが早いか遅いかを別にすれば、たくさんあります。

その中で、「熱中症などになってしまったときは、『首』『わき』『鼠径部(そけいぶ=股関節の付け根あたり)』の3ヶ所を冷やしましょう」というフレーズを聞いたことありませんか?

実はこの方法、全然深部体温が下がらないんです。重度な熱中症である熱射病になった人がいて、その人の首、わき、鼠径部にただ氷を置いて冷やしても、深部体温が下がるスピードはかなり遅いので、下手をすれば命を落とすことに繋がってしまいます。今回の記事は、そんな話です。

>>今回の参考文献はこちらです。

首腋窩鼠蹊部アイシングスクショ

Cold Water Immersion: The Gold Standard for Exertional Heatstroke Treatment

2007年に発表された、熱射病患者の治療に関する論文です。

 

EHSinCompAthスクショ

Exertional Heat Stroke in Competitive Athletes

熱射病に関するとても有名な論文の1つです。

 

スクショ_NATA熱中症

National Athletic Trainers' Association Position Statement: Exertional heat Illnesses

このサイトでは何度も出てきてるので説明不要ですね。アスレティックトレーナーの人は全員必読です。

Proulxスクショ

Effect of water temperature on cooling efficiency during hyperthermia in humans

熱中症のケアとしての水風呂の効果的な温度を研究した、Proulxらによるとても有名な論文です。

Heled2004水道水処置

「The "Golden Hour" for Heatstroke Treatment」

Heledらによる「素早い深部体温の減少」の重要性を4つの熱射病が起きたケースを元にして説明した、2004年の論文です。

 

AlternativeCoolingMethod

Cold-Water Dousing with Ice Massage to Treat Exertional Heat Stroke: A Case Series

McDermottらによる、氷で冷やされた水風呂ではない熱射病ケアの効果的な方法を探った論文です。2009年発表。

 

 【追記(2018.7.20)】多くの方にこの記事を読んでいただき、ご指摘を受けたので追記です。この「3点クーリング」によるアイシングは、熱中症の予防のためにはぜひやっていただけたらと思います。熱中症にならないために身体を冷やすことはとても大切です。今回の記事では、「熱射病(=重度の熱中症)になってしまった人に、この方法 "だけ" を行なっていてもダメです、ということをお伝えできればと思います。

 

熱射病についての復習を少しだけ

熱射病_熱_熱中症

「熱射病」は、熱中症の中でも最も重度な状態で、特徴は「神経・精神の障害」「40.5℃以上の深部体温」が挙げられます。深部体温が40.5℃以上の状態が長い時間続いてしまうと、全身の炎症反応から多臓器不全へと進み、最悪の場合は死に至ります。

よって、少しでも早く深部体温を下げることが、熱射病患者の命を救うことに繋がるのです。

どれくらいのスピードで、どれくらい深部体温を下げるべきなのか

NATAの熱中症に関するポジションステイトメントによると、熱射病になってしまった人への対応・処置として一刻も早く行うべきと示されているのが「熱射病になってしまってから30分以内に、深部体温を38.9℃以下に下げる」ということです。

熱射病として診断される1つの基準が「深部体温40.5℃」ということは先ほどお話ししました。これを「30分以内」に「深部体温38.9℃以下まで下げる」ことが最大の目標となるため、30分の間で、『40.5(℃)−38.9(℃)=1.6℃』は最低でも下げなくてはいけません(←あくまでも「最低」ですからね)。

1.6(℃)÷30(分)=0.05333...なので、「1分で0.05℃」以上の深部体温を下げることができない冷却方法は、熱射病の処置としては不適切ということになります。

 もっと詳しく熱射病について知りたい方は「熱中症で一番重度な『熱射病』の見極めと治療法を徹底解説!」の記事を読んでみてください。

様々な冷却方法とぞれぞれの冷却スピード

というわけで、様々な研究によって示されている、体温を下げるための冷却方法と、それぞれの方法による冷却スピード(=1分でどれくらい深部体温が下がるか)を比較したグラフがこちらです。

冷却方法と冷却スピード

まず上記したように、「1分で0.05℃」も下げられないような冷却方法では、熱射病になった人を救う確率がかなり低くなってしまうため、不適切です。上のグラフを見てみると、早くもこの段階で「首・わき・鼠径部でのアイシング」が脱落。それくらい、この方法での冷却は深部体温が下がるスピードが遅いため、この方法のみに頼るのはとても危険ということがわかります。

1)「首・わき・鼠径部」でのアイシングは、熱射病のケア・処置として不適切

何度か上記していますが、今回の記事の結論は「首・わき・鼠径部を冷やすことは、深部体温を下げるスピードが遅いため熱射病のケアには不適切である」というものです。ではそもそも、なぜ「首・わき・鼠径部」でのアイシングが、熱中症のケアとして本に載っていたり、授業で習ったりするのでしょうか?

これらの部位は、「大きい血管が比較的身体の表層を通っている」ため、その血管を冷やすことで、そこを通る多くの血液が冷やされ、その冷やされた血液が全身に回るため、深部体温を効果的に下げることができる、と考えられていたからです。

しかしこの方法は、何もしないよりは多少(本当に多少)深部体温が下がるスピードは早くなるようですが、熱射病になってしまった人を救うための方法としては不適切です。

それではここから、上のグラフで挙げた他の冷却方法についても、簡単に紹介します。

2)氷で冷やした水風呂(2℃・8℃)に全身浸かる

深部体温を最も素早く下げることのできる方法がこの「氷で冷やした水風呂に全身を浸からせること」です。上の表で示したのはProulxらによる研究(2℃・8℃)での結果で、冷却スピードはそれぞれ「1分で0.35℃」「1分で0.19℃」の深部体温を下げることができました。

今回私が作成したグラフには載せませんでしたが、Proulxらの研究以外でも、様々な研究者が様々な温度の水風呂での冷却スピードを研究で示していますが、それら全てが軒並み「1分で0.15℃」以上の冷却スピードを示しています。

NATAのポジションステイトメントには、熱射病になってしまった人に対する対処法・ケアとして、「全身(首まで)を1.7℃〜15℃の水風呂に浸からせ、常にその水をかき混ぜることで、最も効果的な冷却を行うことができ、1分で約0.2℃の深部体温減少を引き起こすことができるだろう」と示しています。

POLAR productsには、上の写真のPolar Life Podという商品があります。持ち運びがラクにできるバッグのようになっており、水と氷さえ確保しておけば、いつでも熱中症患者の全身を冷やすことができますね。

3)約12℃の水を全身にかけ続ける+アイスマッサージ

McDermottらによる研究は、全身を水風呂に浸からせるのではなく、水をかけ続けるという方法を用いました。さらに加えて、大きい筋肉(胸・お腹・前もも・ふくらはぎ)をアイスバッグでひたすらアイスマッサージをし続けるというケアを行なっています。

水の温度は約12℃が使用されたということで、NATAのポジションステイトメントで示された水風呂で使用するべき温度としては有効な範囲です。ですが結果として、この方法での冷却スピードは「1分で0.13℃」でした。

いくら水をかけ続けたとしても、そこには数秒のラグ(=冷たい水が肌に触れていない時間帯)があるため、大きい筋肉のアイスマッサージも行なってなるべく全身冷やし続けたようですが、「全身水に浸かる(=肌を水にずっと触れさせる)」という方法と比べると、冷却スピードは遅くなったと考えられます。

また、MacDermottらの研究は「ひたすら水をかける」人と「アイスマッサージをし続ける」人は、合計で6〜8人もいたようです。これだけ多くの人が熱射病患者にこの方法で対応をして、「1分で0.13℃」の冷却スピードだったということです。対応人数が少なければ、もっと冷却スピードは落ちるでしょう。

4)15℃の水道水を全身にかけ続ける

ColdWaterDousing

こちらはHeledらの研究より。水道水という説明はありましたが、水温は15℃とあるため、こちらもNATAの推薦範囲内の水温です。2)との違いは「アイスマッサージをしたかしていないか」です。

この方法による冷却スピードは「1時間で2.5〜3.0℃」のスピードだったと結論づけられています。これはつまり「1分で0.041〜0.05℃」の深部体温が下がるスピード。かなりスピードが落ちましたね。

このスピードでは、もし仮に熱射病患者の深部体温が43℃あった場合、1時間水道水を全身にかけ続けてもまだ40℃です。これでは、命を落とす危険性はかなり高いとともに、臓器にかなりのダメージが起きてしまいます。効果的な冷却方法とは言えません。

2)の研究とは、使われた水温が約3℃異なるため、温度の違いも冷却スピードに影響した可能性はありますが、水温よりも、全身をとにかく冷やし続ける(=冷えていない場所・時間を作らない)ということが深部体温を効果的に下げるために必要なのだと思います。

 NATAポジションステイトメントには、もし全身を浸からせる水風呂ができない状況にある場合は、全身ではなくても、部分的に浸からせることができる部位は水に浸からせて(手や足などだけでも)、残りの部位は氷で冷やしたタオルを全身に当てて冷やしましょう、とあります。とにかく全身の肌を冷やし続けることが大切です。

水温の違いは冷却スピードにあまり関係がない?

以前書いた「冷たい水のシャワーで体温は下がりきらない!やはり氷風呂がベスト」の記事の参考文献で用いた研究は、「20℃の水道水(シャワー)」を浴び続けた時の冷却スピードは「1分で0.07℃」という結果でした。こちらの方が浴びた水の温度が5℃高いにも関わらず、冷却スピードは早かった、ということになります。

なぜこの違いが出たかを考えてみると、まず一番気になるのは、Heledらの論文には「どのように全身に水道水がかけられたのか」が詳しく説明されていないところです。よって、実は全身へしっかり水がかかっていなかったために冷却スピードが遅かったのではないか、ということが可能性として考えられます。

また、このシャワーの記事で参考文献にした研究の被験者は、全員熱射病ではありませんでした。というのも被験者は、深部体温が38.5℃〜40℃の状態で身体の冷却が始まりました。冷却し始めの深部体温の違いが冷却スピードの違いを生んだ可能性もあります。

ですがいずれにしても、1分に0.05〜0.07℃の冷却スピードは熱射病患者への治療・対処としては遅すぎるため、不適切な方法と言えます。

5)扇風機に当たる

この研究はAbstract(=要約)のみしか読むことができなかったのですが、扇風機は4m/秒のスピードで、室温22℃の部屋の中で研究が行われました。結果は「1分で0.03℃」の冷却スピード。これは「首・わき・鼠径部へのアイシング」と冷却スピードはあまり変わりません。

扇風機に当たること自体は、汗を蒸発させて気化熱による体温の減少を狙っているので間違ってはいないのですが、この方法のみでは、なかなか深部体温は素早く下がってはくれません。他の方法も組み合わせて行いましょう。

まとめ

熱中症の対処方法としてよく言われる「首・わき・鼠径部のアイシング」と、その他の冷却方法について、その冷却スピードを比べてみました。

もちろん、何もしないよりはこれら3カ所を冷やした方が良いですが、ここを冷やせば安心!ではない、ということを頭に入れておいて欲しいなと思います。水風呂ができる環境というのは現実的には少ないと思います。よって、これら3カ所だけではなく、冷やせるなら4カ所、5カ所、6カ所、と増やし、なるべく身体全身をカバーできればより良い対処法となります。また、涼しいところに移動したり、衣服を脱がせたり、水をかけたりなど、複数の対処法を組み合わせて、より迅速に体温を下げる努力をしていただけたらと思います。

以前学校で習ったから正しい。教科書にのっていたから正しい。とは限りません。科学は日々進歩している、ということですね。常に自分が持っている情報をアップデートして、自分の大切な人や、自分のチーム・選手・患者さんを、熱中症による事故から守れる人になりましょう。

 

コメント一覧
  1. […] ・首回り、わきの下、太ももの付け根は太い血管が走っているので、そこを冷やすことで効果的に体温を下げることができます。←これは古い方法であまり効果がないようです。詳しくはこちらから「熱中症.com」 […]

  2. YUKI より:

    熱射病(重度の熱中症)対策を一般化するのはどうかと思います。
    むしろアイシング以上の対応を素人がするくらいなら救急車を呼べが正しいのでは?
    よほどの僻地でない限り、水風呂を準備している間に救急車は到着するし、冷やしすぎることで低体温症を引き起こすこともあります。
    応急処置と救急医療は分けて考えるべきではないでしょうか?

    • ATSUSHI より:

      YUKIさん

      コメントいただきありがとうございます。

      重度の熱中症(=熱射病)になってしまった場合は、深部体温が40℃以上である時間が1分でも長ければ長いほど、命に危険が及んだり、重度な障害が残ってしまうことがわかっています。よって、すぐに救急車を呼ぶのはもちろんなんですが、待っている間に少しでも深部体温を下げることが、その人の命を救ったり、後遺症を残さないことに繋がります。アイシングをすることは、何もしないよりはるかに良い対処なので、ぜひやっていただきたい処置です。ですがもし私の記事を読んでいただき、「部分的に冷やすこと」よりも「全身を冷やすこと」の方がよりベターということを知っていただければ、その場所でできる最善の行動をとっていただけるのではないかな、と願っております。

      ご指摘の通り、冷やし過ぎの低体温症は、気をつけなければいけないことの1つです。よって、水風呂(氷風呂)に浸からせている時は、常に体温のチェックをする必要があります。日本救急医学会による熱中症診療ガイドライン2015によれば、2℃の水に9分浸からせたことで、39.5℃から38.6℃まで下がった、というデータが示されています(下記リンクを貼ったので、もしよろしければご参考にしていただけたらと思います)。
      https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf

      熱射病になってしまったら、救急車が来るまでの時間での応急処置次第で、命が助かるか助からないかが決まってしまいます。一番は熱射病にならないようにしっかり予防すること。もし万が一周りの人がなってしまったら、なんとかして全身を冷やすために全力を尽くしていただけたらと思います。

  3. ぷにたん より:

    熱射病に至る前の、”対策”として首周りやわきの下などを冷やすのも効果がないのでしょうか?

    • ATSUSHI より:

      ぷにたんさん

      コメントいただきありがとうございます。

      熱中症の予防として身体(首回りや脇の下)を冷やすことは、効果がないわけではないので、ぜひ積極的にやっていただけたらと思います。今回の記事でお伝えしたかったのは、熱射病になってしまったとき(深部体温40.5℃以上)は、できるだけ早く深部体温を下げる(38.9℃以下)ことを目標にしないといけないのですが、それが目標の場合、ただ首と脇の下と鼠蹊部に氷をおいておくだけでは全く深部体温が下がらず、命が助からない可能性が高いです、というお話です。3カ所を冷やしておけば大丈夫!と考えていただきたくないので、今回の記事を書きました。もし冷やす道具が少ししかなかったら、3カ所を冷やしていただいてもいいですが、それにプラスして、できるだけ涼しい場所に移動したり、衣服を脱がせたり、扇風機などで風を送ったり、できるのであれば全身に水をかけたり、人手がいれば全身をくまなく氷で冷やすなど、できること全てをやっていただけたらと思います。

      なので、熱中症を予防するために身体を冷やす時も、首回りや脇の下という場所にこだわらず、頭・顔・首・わき・背中・脚・足など、冷やせるのであれば全身をくまなく冷やす方がより効果的です。

  4. 通りすがり より:

    失礼致します。

    初見で今回の記事を見て、他の方のコメント欄に「ぜひ積極的にやっていただけたらと思います。」とは
    受け取りづらいのではないでしょうか?
    正直どっちやねん?と思ってしまいます。

    「1分で0.05℃」も下げられないような冷却方法では、熱射病になった人を救う確率がかなり低くなってしまうため、不適切です。
    上のグラフを見てみると、早くもこの段階で「首・わき・鼠径部でのアイシング」が脱落。
    それくらい、この方法での冷却は深部体温が下がるスピードが遅いため、この方法のみに頼るのはとても危険ということがわかります。」

    これを見て、上記のように本来してほしいべき方法と
    従来のような「首・わき・鼠径部」を氷で冷やす方法を「併用して」行うほうがいいとは
    一般素人は思いづらいんではないでしょうか?

    全く従来の方法では効き目がないと思ってしまうのでは?

    コメント欄の返信のような書き方であれば理解はできますが
    この記事へ興味を引かせる為の強気の発言であれば少し書き改めたほうがよろしいのではないでしょうか。

    • ATSUSHI より:

      通りすがりさん

      コメントありがとうございます。

      記事への興味を引かせるための発言では全くなく、ただ私の伝え方が悪く、言葉が足らずに多くの方に誤解を招いてしまったようで、申し訳なく思っております。先ほど数行ですが、記事内にこの記事の主旨を追記させていただきました。重度の熱中症(=熱射病)になってしまった場合、この3点だけを冷やしていてもその人は助からないため、3点を冷やしたから安心!とは思っていただきたくなく、この記事を書きました。3点でのクーリング(=首・わきの下・股関節の付け根)を含め、身体を冷やすことは熱中症の予防には効果があるので、予防法の1つとして、ぜひ行なっていただけたらと思います。

      ご指摘ありがとうございました。

  5. キンヒョンスウ より:

    「衛生工学衛生管理者」です。
    この記事は基本的にOKだと思うんですが、虚血性疾患が有る場合どろどろの血が一気に詰まると考えられませんか?意識がないと誤飲があるので飲み物も下手に与えられませんし、都会だと救急車が5分程度で来るので、優先順位はまず救急車を呼ぶ。それから誘導係りと水を確保する係りに手分けでしょうね。
    危険予測と対応の順番は1:回避する(中止または別のやり方に変える)、2:やり方を変える、3:影響を少なくする、4:保護具を使う ですから。暑さ指数の考え方を広める方が有効だと思います。ニュースで28以上は危険って言ってますがあれは間違いで、高温馴化して28です。馴化前は26で両方安静時ですよね。ランニングするなら20でも危険って事を皆さん知らないんですよ。
    https://www.jaish.gr.jp/information/h0616-1b.pdf

    • ATSUSHI より:

      キンヒョンスウさん

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通りで、一刻も早く救急車を呼ぶことは絶対にすべきことです。ですが、参考文献にも明記されていますが、熱射病(=深部体温が40.5℃以上)になってしまった場合は、救急車を呼ぶことと同時、もしくはそれよりも早くに冷却を開始して体温を下げ始めなければ、命を落とす危険があるとされています。意識がなければなおさら、何よりも真っ先に冷却を開始することが不可欠です。

      危険予測と対応の順番に関してはまさにその通りで、まず第一は「熱射病にならないこと」です。予防が何よりも大事。熱中症の予防のためには暑さ指数の考え方を広めることが有効というのは、私も同意見です。このサイトでも2つほど「暑さ指数」に関する記事を書いておりますので、もしよろしければそちらもご一読いただけたらと思います(下にリンクを貼らせていただきます)。また、暑熱馴化のお話もその通りで、少しでも多くの人に「暑さ指数が高い状況での運動は危険」ということを伝えていけたらと思っております。

      https://nettyuusyo.com/wbgt/
      https://nettyuusyo.com/wbgt-dept-of-environment/

    • たんぽぽ より:

      先日 近所の独居高齢者が熱中症になり 救急要請しましたが、到着するのに20分弱 搬送先決定するまでに10分かかりました。要請後 すぐ浴槽に浸からせ、近所中から氷を集めて入れました。低体温症になる危惧? あの時の患者さんの体を触ってたら そんな懸念は吹っ飛びました。世田谷区在住で 近所に大きな病院もあるところなので よっぽど車でとも思いましたが、救急車はすぐ来るからという意見を聞いての30分待ちです。救急隊も氷水浴槽に入ってる患者さんを見て、「良かった。」「首脇鼠蹊部は予防法なので」と言ってました。先に掲載げてくださってる論文に目を通していた おかげです。患者さんは来週中には退院されます。熱中症は同時多発するものと思っていた方が良いと思います。

      • ATSUSHI より:

        キンヒョンスウさん

        コメントありがとうございます。

        救急車がきたのが30分後というのは驚きですね。ただ待つだけで何もしていなかったら本当に危なかったと思います。熱射病の場合は、とにかく早く身体全身を冷やすこと。病院に運ぶのはその後です(体温が下がって状態が良くなっても必ず病院に行く)。素晴らしい対応だったと思います。来週中に退院とのこと、本当に良かったです。

  6. FBからの通りすがり より:

    突然の出来事で素人が熱射病かの判断ができるのでしょうか?そもそも深部体温が測れる状況下にいることの方が少ないと思います。熱射病ありきで準備をして生活している人はいないわけで一般的な状況下で出来ないような情報を発信されても、素人は益々処置できないと思います。あまりにもリアリティーが無さすぎます。
    熱射病の場合に一刻も早く深部体温を下げなければ命を落とすリスクが高まることはわかりましたが、水風呂(氷入り)を準備して対処する事は不可能に近いですね。

    • ATSUSHI より:

      FBからの通りすがりさん

      コメントありがとうございます。

      おっしゃる通り、一般の方が熱射病かそうではないかを判断することは非常に難しいです。参考までに、熱射病になると現れる症状をリンク記事に掲載しているので、もしよろしければ参考にしていただけたらと思います(https://nettyuusyo.com/exertional-heatstroke/)。また、深部体温を測定するためにはそれ専用の体温計が必要で、それについては私も持っていないので測定できません。深部体温を測定できる人は限りなく少ないということは、私も重々承知しております。

      ですが、熱射病というのは、全身を冷たい水で急激に冷やすことでしか命を救うことができないと言ってもいいくらい、とても重度なものです。よって、複数の氷で身体の数部位を冷やしておく"だけ"では、重度な熱中症になってしまった人を助けることはできない、ということだけでもまずは知っていただけたらと思います。

      熱射病ありきで準備をして生活をしている人がいないからこそ、熱射病になってしまうと命を落としてしまう危険性があります。氷入りの水風呂に入れる環境というのが限られていることも重々承知しております。よって、熱射病にならないように予防することがとても大切になります。また、大型の野外イベントなどを企画・運営される方々に、参加者が熱射病になってしまった時の準備として、大量の氷と水風呂をぜひあらかじめ用意しておいていただきたい、という願いもこの記事には込められています。

  7. Fukui より:

    部活動で運動部の顧問をしております.FaceBookにこちらの文章がシェアされており,内容が気になりリンクを辿って来ました.こちらへ来てきちんと読むと,『熱中症の対応・処置 「首・わき・鼠径部」を氷で冷やす方法では体温が全然下がらない』というタイトルの通り,文章の意図が良く分かるのですが,シェアされたFaceBookには『「首・わき・鼠径部」を氷で冷やす方法では体温が全然下がらない』というタイトルだけがセンセーショナルに表示され,処置なのか予防なのか,それ以前に熱中症なのか他の発熱なのかもわかりません.FaceBookのシェアの仕様ですから仕方が無いですが,シェア先から来られ,文章をきちんと読まれずに早合点される方が大勢おられるのではないかと心配になりました.

    • ATSUSHI より:

      Fukuiさん

      コメントありがとうございます。また、記事も読んでいただいたということで、本当にありがたく思います。

      私自身としてはセンセーショナルなタイトルをつけたつもりは全くなく、伝えたいメッセージをそのままタイトルにしたつもりでしたが、言葉足らずで意図とは異なるメッセージが伝わってしまったようで、申し訳ありません。非常に多くの方々にこの記事を読んでいただいているとともに、様々なご指摘をいただいており、その度に少しずつ加筆修正しております。引き続き、正しい情報を発信していくことに全力を尽くし、一人でも多くの方を熱中症による事故から救うことができるよう、努力していこうと思います。

  8. […] 「首・わき・鼠径部」を氷で冷やす方法では体温が全然下がらない […]

  9. しもしも より:

    水を飲む。冷たい水を飲む は効果的ですか?

    • ATSUSHI より:

      しもしもさん

      コメントありがとうございます。

      「冷たい水を飲む」は熱中症予防の方法の1つとして効果的と言われています。身体の中からも冷やす、ということですかね。
      環境省による熱中症情報予防サイトには「5〜15℃」の水が、吸収も良く冷却効果も大きい、と示しています。

      ただ、ここに関しては私もしっかりわかっていないので、しっかり調べてまた記事に書こうと思います。
      ですが、冷たい水を飲むことは水分補給にもなり、身体の中から冷やす効果もあると思うので、ぜひ行なってください。

  10. 多田尚弘 より:

    丁寧にまとめられた理解しやすい記事を提供してくださりありがとうございます。
    障がい者就労支援福祉施設の責任者をしており、東京都様からも予防対策に関する資料は多く頂いて勉強していたつもりでしたが、応急処置に関しては環境省さんの資料を参考にしていました。
    http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_pr.php
    ちなみに現在公開されている最新版のPDF資料がこれです。
    http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/heatillness_leaflet.pdf

    健常者より体力が劣る方も多く、年配者も増えてきましたので、安全第一で電気代など二の次でエアコンを入れ、こまめに休憩させてその都度冷やした麦茶や各自好みのペットボトル飲料などを飲ませているので、今のところ無事に済んでいます。
    ただもし利用者さんが熱中症を起こしてしまった場合に、この環境省さん資料に従っていたらとんでもない事態になった可能性が高いと思うと、ゾッとしてます。

    ちなみに私は消防庁の上級救急救命講習を受けただけの素人なので、この応急処置に関しての初歩的な質問があります。
    これも若かった四半世紀以上前に習った知識なので、化石化している誤知識かもしれませんが、プールや海などに入る前には、十分な準備運動をしてゆっくり浸からないと心臓麻痺の危険性があると教わりました。
    身体を氷水で急冷して、心臓麻痺などの危険性は無いのでしょうか?

    • ATSUSHI より:

      多田尚弘さん

      コメントありがとうございます。

      環境省の熱中症情報予防サイトは、私もよく参考にしています。
      この添付していただいたPDFは初めて見ました。とても見やすくて良い資料だと思います。

      熱中症になってしまい、呼びかけに応えないレベルまでなってしまったら、重度な熱中症と考えて良いと思います。
      そんな患者に「3点クーリング」のみの処置では、命にかなりの危険が及びます。
      水風呂ができれば最高ですが、ホースやバケツなどで全身に水をかけ続けたり、ありったけの氷を使って身体を冷やしたりなど、できる限りを尽くして体温を下げるべきですね。

      さて、冷たい水に入ることによる心臓麻痺の危険性についてですが、これは「普通の体温の人」と「熱中症によって高体温になっている人」では身体の反応が変わってくるようです。
      普通の体温の場合は、水に入る前に身体に水をかけたり、水にゆっくり浸かるなどをした方が良いようです。一方、深部体温が高い状態の場合は、冷水でも身体は気持ちよく感じるため、心臓麻痺やショックなどの危険性はあないようです。熱射病患者を2〜15℃の冷水につけたことで心臓麻痺が起こったという事例は、私が調べた限りでは出てきていません。

      また新たな発見や事例等が見つかりましたら、記事に書こうと思います。

  11. たいがー より:

    大変勉強になりました。これさえやっておけばいいなんてのは、これさえ食べていればいい◯◯ダイエット!と同じと個人的に考えています。まさに慢心。ただ、原理原則として何故なのかを把握しておくことは必要ですね。

    私は今、愛知県の公立高校に勤めています。先日も本校では終業式を体育館で強行し、10人が体調不良を訴えて保健室へ。とにかく体温を冷やすことに徹して搬送される子は0。しかし、部活動では前兆があれどそれを顧問が見抜けずに1週間で二度の救急搬送がありました。気持ちの優しいいい子達はみんな頑張ってるから、自分だけ休むなんてできない!辛いのは一緒!そんな風に口を揃えて言います。頑張り屋さんは重症度が深刻かもしれません。

    ご存知の通りエアコンの設置率はまだまだ低く、エアコンよりブロック塀、教育に対する予算より他へ。学校には氷だって十分にないのが現状。ランニングコストのかかる冷凍庫、製氷機はあまり許可が下りません。これらは教職員や予算組をされる方々の熱中症に対する認識の甘さだと個人的に考えています。このような分かりやすい文章、こんなにも懇切丁寧な返信をされている方に、是非本校に、いや、本県でご講演いただきたいです。そうすれば熱中症でスポーツの楽しみや、今までの努力を奪われる子どもたちがかなり減るのでは!?と感じました。ありがとうございました。今後も頑張ってください。頑張っていきましょう。

    • ATSUSHI より:

      たいがーさん

      コメントありがとうございます。

      「頑張る子ほど重症になる」というのは本当に間違いないと思います。よって、「熱中症は重度になると命に危険がある」ということを先生方や大人は子供にしっかりと伝えていただきたいです。

      「終業式は体育館でやるもの」「全校朝礼は校庭でやるもの」などといった慣例は、何も考えずにそれが当たり前となってしまいがちですね。ぜひ先生方には、今一度慣例行事のやり方を見直して、生徒の安全を第一に考えた運営を考えていただけたらと思います。

      エアコンの設置率の低さや、冷凍庫や製氷機の許可が下りない話などは、知りませんでした。そういった事情があるのですね。何十人という方が熱中症が原因で亡くなってしまった今年の出来事を決して無駄にせず、これ以上の被害が起きないよう、私は引き続き、誰にでも伝わる言葉、文章で、熱中症に関する正しい情報をお伝えできるよう頑張っていきたいと思っております。もし機会があれば、たいがーさんの学校にもお邪魔してお話できたら嬉しく思います。

  12. 空飯 より:

    救急救命士です。
    3点冷却は有効です。

    記事のタイトルだけだと「熱中症全体に冷却は有効ではない」という誤解を与えてしまいます。

    我々救急隊も搬送中冷却を実施します。
    他にも酸素投与、ショック状態なら静脈路確保と急速輸液、ショック体位をとります。

    • ATSUSHI より:

      空飯さん

      コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。

      タイトルに関して、多くの方にご意見をいただきました。タイトルは、特に練りに練って作ったタイトルというわけではなく、素直にこの記事で伝えたいことをそのままタイトルにしました。予想外に多くの方の元にSNSを通じて広がり、記事を読まずにタイトルだけを見ると確かに誤解を与えかねないなと思いました。ですが、記事を読んでいただければ言っている意味がわかると思いましたので、タイトルを変更することはやめました。

      3点冷却については、予防としては有効だと思います。ですが、熱射病の処置としては有効だとは私は思っていません。3点よりも5点の方が有効だと思いますし、5点よりも、点で考えずにとにかく全身を冷やす方が有効だと思います。よって、「3点冷却が有効」という言葉が広まってしまうと、私のタイトルと同様で、「3点クーリングをしていれば熱中症は防げる」という誤解を与えてしまうと思いました。

      なかなかタイトルだけで全てを伝えることは難しいため、「『熱射病』という命を落とす危険性があるものに対しての対処法として、3点冷却だけをしていては危険です」という、私が一番伝えたいメッセージをタイトルに込めています。

コメントを残す

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事