熱射病の原因・症状・予防・対処法のまとめ

熱射病_熱_熱中症

熱射病とは、深部体温が40℃以上となり、中枢神経系に障害が起きたり、複数の臓器がうまく働かなくなるものを指します。熱中症の中では一番深刻なもので、最悪死に至るものです。

運動をすると、体内では熱が発生します。この熱を身体は色々な手段で体外に放出して、体温を一定に保とうとするわけですが、気温や湿度が高い環境で運動をしていると、この体外への熱の放出がうまくいかなくなります。すると、体内に生まれた熱がどんどん溜まってしまい、体温(=深部体温)がどんどん上がってしまいます。そして体温が40℃を越えると、内臓の機能に悪い影響を与えてしまい、最悪の場合、死に至ってしまいます。

というわけで今回は、熱中症による死亡事故を防ぐためにも、まずは熱射病についての基本知識を紹介していきます。


>>参考文献はこちらです。

ACSMPSスクショ

Exertional Heat Illness during Training and Competition|American College of Sports Medicine

American College of Sports Medicineが2007年に発表した、運動中・スポーツ中に起こる熱中症についてのPosition Standです。

 

熱射病になってしまう原因

熱射病

熱射病だけではなく、熱中症になってしまう大きな原因としてあげられているのは以下の3つです。

  1. 気温・湿度ともに高い環境のもとで激しい運動を行うこと
  2. 暑熱馴化ができていない
  3. 基礎体力が低い(=普段運動をしていない)

熱中症対策はまず暑熱馴化から始めよう

2017.03.31

 

上の3つに加えて、熱射病になるリスクが高まるのはWBGTが28℃以上の日高強度(きつい)運動を1時間以上したときです(WBGTについては、詳しく説明した記事をまた次回書きます)。特に運動の種類については、自転車のロードレースやマラソンなど「長時間&高強度の運動」で特に起こりやすいようです。

と言っておいていきなり逆のことを言いますが、上にあげたように暑熱馴化ができていなかったり、普段運動をしていなくて基礎体力がない人は、気温が高い日ではなくても(13℃前後のときでさえも)熱射病は起こる可能性がある、ともこの論文には示されています。

上に挙げた熱中症・熱射病になる大きな原因に加えて、以下のものも重なると、さらに熱射病になるリスクは高まります。

  • 急に運動・トレーニングの強度を上げる
  • 暑い環境にいる時間が長くなる
  • 体内の熱を体外に放出しづらい服装をしている
  • 運動を始める前から軽い脱水状態
  • 睡眠不足
  • 栄養不足

 

2つ目に挙げた「暑い環境にいる時間が長くなる」は、1日だけの話ではなく「累積の効果」とこの論文では示されています。つまり、毎日暑い環境に長くいればいるほど、少しずつ体内に熱が溜まってって、熱射病になるリスクが上がるようです。

 

さらに、以下のものに当てはまる人も、熱射病になるリスクは高いです。

  • 肌の病気を持っている
  • 日焼けしている
  • アルコールを摂取している
  • ドラッグを使っている
  • 抗うつ病の薬を使っている
  • 肥満
  • 40歳以上
  • 過去に熱中症になったことがある
  • 風邪をひいている・熱がある・下痢をしている・嘔吐した

 

熱射病の症状

頭痛

以下に挙げたものが、熱射病になったときに現れる典型的な症状です。

  • 方向感覚の喪失
  • 混乱
  • めまい
  • 分別のない行動
  • わけのわからないことを喋る
  • イライラしている・興奮している
  • 頭痛
  • 歩くことができない・バランスがとれない・つまずく
  • 過呼吸
  • 吐き気・嘔吐・下痢
  • 意識がなくなる・昏睡状態

 

熱射病を予防するためにできること

水分補給

熱射病を予防するためにできることをここから挙げていきます。

 

こまめな水分補給

熱中症になる原因の1つが「脱水(=体内の水分が足りなくなること)」なので、脱水状態にならないように、こまめに水分を補給することが大切です。水分を補給することで、体温を下げる効果もあります。

ですが、水分補給をしていれば熱射病にならないかと言われれば、もちろんそんなことはありません。脱水状態になっていなくても、高強度の運動によって急激に体内に熱が産まれてしまうと、体温が急上昇して、熱中症→熱射病になってしまいます。

 

暑熱馴化の期間をしっかりつくる

人間の体はちゃんと環境に順応します。暑い環境にいたら、なんとかしてこの暑い環境でも快適に過ごせるようにしようと、汗をたくさんかいて体内の熱を下げようとしたり、その汗で失う塩分の量もだんだん少なくなっていきます(人間の体って本当にすごいです)。ですが、順応するのには少し時間がかかります。NATAが発表した暑熱馴化に関する論文では14日間準備期間をつくりましょう、とあります。

熱中症対策はまず暑熱馴化から始めよう

2017.03.31

 

部活動の顧問の先生や、クラブスポーツの監督・コーチなどは、しっかり練習の時間や強度をコントロールしましょう。徐々に運動の強度を上げていき、徐々に運動する時間を長くして、身体を暑さに慣らしていきます。熱射病は、暑い環境での運動し始め(初日〜4日目くらい)に一番なりやすいので、特に最初は体調を気にしながら、休憩を多めにとりながら運動をしましょう。

 

普段から定期的に運動をする

熱中症になってしまう大きな原因の1つとしてあげた「基礎体力が低い」を改善するために、定期的に運動・トレーニングを行なって基礎体力を高めましょう。普段から運動をして筋肉をつけ、体力をつけ、心肺機能を高めておくと、暑い環境での運動をした時も身体がうまく暑さに順応してくれます。

 

熱射病になってしまったら?

水風呂

予防をしたとしても、熱射病になってしまうこともあります。そんな時に慌てずに適切なケア・処置をすることができれば、なんの問題もなく復活することができます。熱射病は放置しておくと死に至ってしまうので、なってしまった時にするべき処置をしっかり覚えておきましょう。

 

深部体温を測る

深部体温は直腸温とも呼ばれ、直腸の温度を測定します。直腸で測定するというのはつまり、お尻の穴に体温計をさして測ります。よって、直腸温を測ることができる体温計と、それを使うことができる人・環境作りができないと、部活動やクラブスポーツで深部体温を測ることはなかなか難しいですが、この人もしかしたら熱射病かも?というとき、その判断に深部体温の測定は不可欠です。

というのも、私たちがよく知っている耳・口・脇などで測定する体温は、空気や肌、汗などに体温計が触れることで実際の体温よりも低く出てしまうため、あまり信用ができません(「体温」についてはまた詳しい記事を書く予定です)。

 

とにかくすぐ冷やす!冷やす!冷やす!

深部体温が40度以上である時間が長ければ長いほど、内臓の機能を悪化させ、最悪の場合死に至ります。よって、熱射病とわかったら、もしくは深部体温が40℃以上になってしまったら、とにかく早く冷却を開始しましょう。この「とにかく早く」というのは、救急車を呼ぶよりも早く、です(もちろん冷却を開始したら救急車を呼びましょう)。

今回の参考文献には「1時間以内」に平常の体温まで下げることができないと、病気になったり死に至る危険性が高まるとあります。冷却中に意識がはっきりしてくれば、その後の経過も良好になることが多いようです。

 

一番早く身体を冷却する方法は氷を入れて冷たくした水風呂に浸かることです。英語ではCold Water Immersionと言われますが、この方法はEvidence categoryがAランクとなっています。Aランクというのはつまり、多くの研究でしっかり証明されているということ。深部体温を下げるのに、氷でしっかり冷やした水風呂に浸かることが一番効果的な方法と証明されています。

特に運動系の部活動では、夏の練習では必ず大量の氷と水風呂を用意しておきましょう。いざとなった時にすぐ冷却を始められないと、命に危険があります。

 

もし水風呂がどうしても用意できない場合はアイスバッグや氷で冷やしたタオルで、頭・首・わき・鼠径部(股関節の前側)を冷やすことも有効です(ただし、氷を入れた水風呂よりは冷却スピードは遅い)。

よく、霧吹きのようなもので全身に水を吹きかけ、うちわで仰いだる扇風機を当てることで体温を下げる方法というのを聞いたことがあるかもしれませんが、この方法では、体温が下がるスピードが遅いです。また、湿度が高い場合はなかなか蒸発しないので、熱射病の時、一刻も早く体温を下げるために使う方法としてはオススメではありません。

 

今回は、熱射病の原因・症状・予防の方法・なってしまった時の対処法を紹介しました。前回書いた「熱けいれん」とは、似たようなところもあれば、全く違うところもあったと思います。もう2種類の熱中症である「熱失神」と「熱疲労」についても、近々記事をアップしようと思います。

>>追記(5/13/2017):全種類の熱中症について記事書きました!ぜひ読んでみてください!

熱けいれんとは?〜原因・ケア・予防方法〜

2017.04.01

熱疲労〜一番起きやすい熱中症の原因・症状・対策まとめ〜

2017.04.06

熱失神の原因・症状・対策・予防法のまとめ

2017.04.08

 

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ABOUTこの記事をかいた人

2013年からBOC−ATC(米国公認アスレティックトレーナー)として活動中。大学時代に後輩が熱射病によって命を落としたことから、熱中症について調べるようになりました。「予防のプロ」として、熱中症に関する正しい情報を伝えていきます。