熱中症による事故のニュースが連日報道されていますね。私はそれを見たり聞いたりする度に、悲しくなります。
この熱中症ドットコムでは何度もお伝えしていますが、熱中症は「100%予防することができる」ものです。
熱中症に関する基本的な情報を少しでも頭に入れておくだけで、熱中症から自分自身も周りにいる人も守ることができるようになります。
さて、今回は「経口補水液(けいこうほすいえき)」についてです。
先日、友人からツイッターで「Yahooトピックス」による熱中症に関する投稿が回ってきたのですが(現在その投稿は削除されてしまっています)、その中に「熱中症の予防のための水分補給には経口補水液が最適である」といった一文がありました(正確な文は忘れてしまったのですが、こんな感じでした)。
確かに、経口補水液は熱中症対策として有効なツールの1つですが、熱中症予防のためにガブガブと飲むような飲み物ではありません。
この記事では、経口補水液の正しい使い方をお伝えしたいと思います。
水やスポーツドリンクと組み合わせてタイミングよく補給することで熱中症の予防に繋がるとともに、熱中症になってしまった時、それを最小限の被害に食い止めることができるようになります。
>>今回の参考資料はこちらです。
1. 熱中症診療ガイドライン2015|日本救急医学会
熱中症に関する情報としてとても信頼できる文献の1つです。P10〜11「熱中症の予防・治療には何を飲めば良いか」を参考にしました。
2. オーエスワン|株式会社大塚製薬工場
オーエスワンを作っている大塚製薬工場のウェブサイトです。オーエスワンの成分や注意事項、更にメディカルフーズとカテゴリーされた他製品の情報も載っています。
3. オーエスワン®️オフィシャルサイト
オーエスワンについての基本情報から、経口補水液に関する様々な情報、脱水に関する知識など、有益な情報が詰まったサイトです。参考文献も記載されており、信頼できるサイトだと思います。
経口補水液とは?
まず、経口補水液とはいったい何なのでしょうか?
経口補水液とは、「食塩とブドウ糖をバランスよく混ぜて水に溶かしたもの」です。
ただの真水を飲むよりも、塩分と糖分がバランス良く含まれている液体の方が体内に吸収されやすいため、脱水症状になってしまったときに、その治療として使われる液体です。
オーエスワン®︎とは?
「オーエスワン」とは、商品の名前です。経口補水液というカテゴリーの中の1つの商品です。
「スポーツドリンク」というカテゴリーの中に「ポカリスエット」や「アクエリアス」や「ヴァーム」があるような感じで、「経口補水液」というカテゴリーの中にある一つが「オーエスワン」ということになります。
オーエスワンは大塚製薬が出している経口補水液ですが、他にもアクエリアスの経口補水液や明治が出している経口補水液、さらに小児用の経口補水液アクアライトORSといった商品もあります。
経口補水液は、上記した通り、水分を体内により効果的・効率的に吸収させるために塩分(電解質)と糖分がバランス良く配合された飲み物で、脱水状態にある人の治療として使われるものです。
オーエスワン®︎の公式サイト3には、以下の記述があります。
軽度から中程度の脱水状態の方の、水・電解質を補給、維持するのに適した病者用食品です。感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態等に適しています。
※「感冒(かんぼう)」とは、風邪やインフルエンザなどのことです。
上記されているように、熱中症のときだけではなく、体調不良などが理由で下痢・嘔吐などの状態にあった時でも、この経口補水液を飲むと、しっかり水分や電解質の吸収力を高めてくれます。
経口補水液は「脱水状態になった時の水分・電解質の補給」に適している
これが、今回の記事の結論です。詳しく解説していきます。
1)経口補水液は脱水状態になってしまった時に飲むもの
これはつまり逆に言うと、「熱中症を予防するために普段からこまめに経口補水液を飲んでおこう!」という感じで使う飲み物ではない、ということになります。
オーエスワン®︎のサイト3には「健康な状態で飲んでも大丈夫」という記載があるので、特に脱水や熱中症になってはいない状態で飲んでも、体調が悪化するわけではありません。
ですが、経口補水液はあくまで「脱水状態になってしまった身体に、素早く水と塩分・電解質を吸収させるために作られた液体」なので、日常生活での水分補給は、水やスポーツドリンクで充分です。
2)1日に飲んで良い量が決まっている
「普段からこまめに経口補水液を飲んでおこう」という使い方はしない、という話を上記しましたが、その理由の1つに「1日に飲んで良い量が決まっている」ということが挙げられます。
暑い夏の水分補給と言うと、1日中こまめに水分を体内に補給し続ける必要があります(「水分補給」については「【まとめ】最新の科学的根拠に基づく熱中症予防のための水分補給」の記事で詳しく解説しています)。
ですが、経口補水液「オーエスワン®︎」の摂取上の注意2には、1日の摂取量の目安として以下のように記されています。
- 学童〜成人・高齢者:1日500〜1000mL
- 幼児:1日300〜600mL
- 乳児:1日体重1kgあたり30〜50mL
さらに、「医師・薬剤師・看護師・管理栄養士の指導にしたがってお飲みください」という注意書きもあります。
それくらいこの経口補水液は、何度も言ってきていますが、「脱水状態のときにしっかり水分が体内に吸収されるように」という目的にしぼって作られています。
3)熱中症予防にはスポーツドリンクでのエネルギー補給も欠かせない
オーエスワン公式サイト3では、「スポーツドリンクとはどう違いますか?」という質問に対してこういう解答が出ています。
経口補水液オーエスワンは、経口補水療法の考え方に基づき、脱水状態において不足している電解質(ナトリウムなどの塩分)を補うために、一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために、スポーツドリンクと比べて糖濃度は低い組成となっています。
やはりこの解答からも、オーエスワンは「脱水状態の身体に素早く水分・電解質を補給するための液体」であることがわかります。
このオーエスワン公式サイトの解答でもう1つ注目すべきポイントは「スポーツドリンクと比べて糖濃度が低い」というところです。
熱中症の予防に水分や塩分の補給はもちろん欠かせないのですが、それと同じくらい重要なのが「エネルギーの補給」です。
よく、熱中症になってしまった人に話を聞くと、外出中・運動中に水はしっかり飲んでいた、と言うのですが、実は朝ごはんを食べてこなかったとか、水ばかり飲んでいてエネルギー(=糖分)を全く補給していなかった、ということが非常に多いです。
食事をしっかり摂ってエネルギーを補給しておくことは、日常生活や仕事、運動などのアクティブな活動を行う上で必須であるとともに、熱中症の予防にも欠かせません。
「熱中症の予防には水分!水分!」となり、意外に忘れがちなのが「エネルギーの補給」なのです。
そして、食事によるエネルギー補給に加えてできるのが「スポーツドリンクによる水分補給」です。
スポーツドリンクには糖分がある程度含まれているため、運動などの活動中において水分補給+エネルギー補給として役立ちます。
普段の生活や運動前の水分補給には、スポーツドリンクをうまく活用することで、熱中症を予防することができます。
熱中症診療ガイドライン20151には、熱中症予防のための食事として、ミネラルや塩分が豊富である「味噌汁」や「梅昆布茶」が有効である、と示しています。
4)おしっこの色をチェックして、脱水気味だったら経口補水液を補給すべし
では、熱中症になったとき以外は経口補水液を使う機会はないのか?といえば、そんなことはありません。
「水分・電解質が素早く補給される」という機能をしっかり利用して、熱中症を予防するとともに、熱中症になってしまった時の被害を最小限に押さえましょう。
以前「おしっこの色を見れば脱水状態かどうかがわかる」という記事を書きました。
詳しくはこちらの記事を読んでいただきたいのですが、おしっこの色が「濃い黄色〜茶色気味」になったら自分は今脱水状態にある、と考えられます。
そして、脱水状態の時に水分を素早く体内に吸収してくれるのが「経口補水液」です。
よって、激しい運動や長時間屋外で活動をするという時は、ぜひスポーツドリンクと経口補水液を両方準備しておくと良いと思います。
基本的な、こまめに行う水分の補給には水やスポーツドリンクを使います。
長時間暑い環境にいなければいけない時は、エネルギーが補給できるスポーツドリンクをぜひ飲みましょう(間食ができるなら固形物も食べてしっかりエネルギー補給する)。
おしっこの色が脱水状態を示したり、熱中症の症状が出てきた場合は、経口補水液を飲んで体内にしっかり水分を吸収させます。
水・スポーツドリンク・経口補水液いずれかをひたすら飲んでおけば良い!ではなく、それぞれの利点をうまく使うことで、熱中症の予防と対処をすることができます。
まとめ
「熱中症には経口補水液!」というイメージが世間についてきたことはまったく悪いことではなく、積極的に熱中症を予防・対策しようという考えはとても良いことです。
ですが、極端に「これだけ飲んでおけば!」となるのは良くありません。
経口補水液やスポーツドリンクなどをより賢く使うことで、効果的に熱中症を予防するとともに、熱中症になってしまった時にも素早く対処できるようになります。
脱水状態になる可能性があるような環境に身をおく、という場合は、ぜひ経口補水液を用意しておきましょう。