よく「運動中はしっかり水分補給をしろ!」とか「水分を摂らないと熱中症になるぞ!」といったことを言われるかと思います。
確かに夏は多く汗をかきますし、出ていった水分は補給しておいた方が良さそうですね。
ですが水分補給は、他にももっとたくさんの理由があるからするべきなのです。
水分補給は熱中症の予防になるのはもちろん、自分のパフォーマンスを100%発揮するためにも、とても重要になってきます。
今回は、つい先日NATA(National Athletic Trainers’ Association:全米アスレティックトレーナー協会)から発表された最新の論文を参考に、より効果的で効率的な水分補給のやり方を徹底的に解説していきます。
>>参考にした文献はこちらです。
「National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active」
NATAのPosition Statementです。2000年に発表されたのは「for Athlete」でしたが、最新版は「for the Physically Active」となっており、アスリートだけでなく一般の方向けに書かれています。
なぜそんなに水分補給をすることが重要なのか?
水分補給の最大の目的は「安全に運動・スポーツを行う」ことと「パフォーマンスレベルを最大限に高める」ということです。
では、それらを達成するためになぜ水分補給が大事なのでしょうか。
水分補給が重要な理由の1つは、「水」が人間の身体の大部分を構成しているということ。
今回の文献には、10〜20代の人の除脂肪体重の約73%を水分で占めている、と示しています。
よって、体内の水分が足りなくなってしまうと、身体の生理学的なシステム(体温調節機能・心血管系・骨格筋系など)が全て影響を受け、うまく機能しなくなっていきます。
では具体的に、体内から水分がなくなっていくとどのようなことが起きるのでしょうか?
特に運動中で考えてみると、重要なのは「血液がしっかり循環するか」ということになります。
身体を動かすために必要な酸素や栄養素は、血液によって全身に送られます。
血液は水分なので、体内で利用できる水分が減っていくと血液も減ってしまいます。
血液が減ってしまうと、充分な酸素や栄養素を運ぶことができなくなってしまうため、筋肉がうまく働かなくなったり、酸素がないのですぐに疲れてしまう、といったことが起きてきます。
さらに、夏の暑い環境で運動をしていると体内に熱が発生してきます。その熱が体内にたまると、体温が上がって熱中症になる危険性があります。
よって身体は、その熱を体外に放散しようとするのですが、その体内の熱を体外に放散するためにも「血液」が必要です。
血液が体内に溜まった熱を皮膚の方に移動させ、それによって汗をかき、熱を放散していきます。
水分が足りなくなる(=血液が減る)と、その働きも失われていってしまうため、熱中症のリスクが高まってしまいます。
「ヒトが持つ体温調節機能のメカニズム|熱の移動と放散で体温を下げる」もぜひ読んでいただければと思います。
水分補給をするメリット
一言で言えば、上記したような「身体の生理学的なシステムが正常に働くように水分補給をする」ということなんですが、具体的に、水分補給をするとどんなメリットがあるのでしょう?簡単に言うと、以下の4点です。
- 運動・スポーツパフォーマンスを維持する(筋力・パワー・持久力などすべて)
- 代謝によって体の中に産まれる熱を体外に放出・放散する能力を高める(=熱中症の予防になる)
- 気持ち・ムードを維持する
- 運動による疲労からの回復を促進する
ただ、上に挙げた4つの水分補給の利益・利点は、「体重の2%の水分」が失われるとなくなっていきます。
2番目にあげた「体内の熱を体外に放散する」という能力は、身体の1%以上の水分が失われた時点でもう低下していってしまいます。
身体の水分が2%失われた時点で、運動のパフォーマンスレベルは低下していき、汗をかく量が減るために熱の放散能力はさらに失われ、気持ちも落ちてきて、すぐ疲れてしまうようになり、疲労もなかなか回復しなくなる。。。といった感じです。悪いことだらけですね。
身体の3%の水分が失われると、熱中症になる危険性がグッと増してしまいます。
パフォーマンスレベル(特に心肺機能)は急激に低下し、のどが異常に乾くようになり、様々な脱水の症状が現れてきます(脱水の症状については以下で説明しています)。
5%以上の損失になると、正常な体温を保つことができなくなり、内臓の機能も正常に働かなくなってくるため、熱射病をはじめとした命の危険が出てきます。
運動中に失う水分は「汗」が最も多い
運動・スポーツをしているとき、最も身体から出ていく水分は「汗」です。その他には、「尿(おしっこ)」「便(うんち)」「呼吸」「嘔吐」などがあります。
夏の暑い環境で運動をするときは特に、汗を大量にかくことで身体の水分量がどんどん減っていってしまいます。
こまめに水分補給をして、運動中の身体の水分量をできるだけ一定にする(+1%〜ー1%)ことで、身体の体温調節機能が正常に働き、心肺機能も正常に働くため、熱中症を予防するとともに、運動パフォーマンスの低下を防ぐことができるのです。
「体重の2%の水分」というのは、例えば体重が60kgの人は、「60×0.02=1.2(kg)」となります。
つまり、運動中に1.2kg以上体重が減ってしまった → 体重の2%の水分が失われた → 上記したような様々なネガティブなことが身体に起きてしまう、となります。
注意したい水分補給が必要な環境
夏の暑い時期に外出・運動・スポーツをする場合は、多かれ少なかれ誰でも水分補給をすると思います。
ですが、水分補給が重要なのは暑い環境で動くときだけではありません。一見脱水とは関係なさそうな、注意したい環境をお伝えします。
1)高度が高い場所で運動をするとき
2500m以上の高度の高い場所に行くと、利尿作用が起こります。
よって山登りをするときや、アスリートの方は高地トレーニングを行うときは、たとえ気温が高かったり暑い環境ではなくても、意識してこまめに水分補給をする必要があります。
2)水の中、もしくは寒い環境で運動をするとき
水の中や寒い場所で運動をするときは、夏に運動をする時と比べると汗をあまりかかないため(かいている気がしないため)、あまり水分補給を意識しない人が多いですが、高地で運動をするときと同様に利尿作用が働きます。
冷たい水や冷たい風が皮膚に触れることで体温が下がり、それが血管の収縮を促し、収縮された分必要なくなった(必要ないと体内が感じてしまう)水分が尿として出ていきます。
さらに、寒い環境で運動をしていると「のどが乾く」という感覚が鈍くなるため、水分補給が遅れてしまいます。
よって、一見脱水症状が起きにくそうな「寒い環境」「水の中の環境」での運動でも、水分補給は重要になってきます。
身体に水分が足りなくなった時の症状
水分補給が足りず、身体が脱水の状態になると、以下のような症状が現れてきます。いわゆる「脱水症状」です。
【初期段階:体重の約2%の水分を失った段階】
- のどの乾き
- 全身の違和感・倦怠感・疲労感
- 肌が紅潮する(赤く火照っている)
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 筋肉のけいれん・つる
【進行・末期段階:体重の2〜5%の水分を失った段階】
- 腹痛・下痢
- 身体(特に頭や首)が熱くなる
- 寒気がする
- 無気力
- めまい・フラフラする
- 急激な体重減少
- 息が苦しい・呼吸困難(重度の場合のみ)
選手たちや運動をする人自身はもちろん、部活動の顧問の先生やマネージャー、クラブスポーツの監督やコーチ、さらには選手たちを周りで支えるスタッフ(トレーナー、両親など)は、脱水症状ってどういうものなのかを知っておくことが大切です。
選手自身は自分の体調を、周りで支えるスタッフや指導者は練習中選手一人一人をしっかり観察し、おかしいなと思ったらすぐに声をかけ、体調の確認ができるようにしましょう。
早めに対処することによって、熱中症の悪化を防ぐことができます。
もし脱水症状になってしまったら?
普通に口から水分を補給できる状態であれば、多少無理をしてでも、少しずつこまめに水分を摂り続けましょう。がぶ飲みはNGです。
吐き気がひどい、実際に吐いてしまう、下痢がひどい、などといった症状で、口から水分を補給するのが困難な状態であれば、病院に行って(意識が朦朧としていたり意識を失っていたらすぐに救急車を呼んで)、点滴をしてもらいましょう。
水分の摂りすぎも危険!
ここまで、水分補給をしっかりすることは多くのメリットがある、ということをお伝えしてきましたが、逆に水分を摂りすぎることも危険です。
運動中の水の飲みすぎは「Exercise-Associated Hyponatremia(運動性低ナトリウム血症)」になってしまう可能性があります。
2014年にアメリカの高校生(アメフト部)が2人、水分の摂りすぎによって死亡するという事故が起きてしまい、その辺りから「脱水」だけでなく、「水分の摂りすぎ」についても多く言及されるようになってきたようです。
運動性低ナトリウム血症というのは、身体に水分がありすぎて、体の中の組織や臓器がその水分で腫れ上がってしまうもの。これが脳までいってしまうと、命の危険になります。
よって上記しましたが、「体内の水分量を一定に保つ(+1%〜ー1%)」ことを意識することがとても重要になります。
下で詳しく解説していますが、運動前・運動後で体重を測定し、体重が増えていたらそれは水分の摂りすぎです。自分にとってどれくらいが「飲みすぎ」で、どれくらいが「水分補給が足りない」のかを、普段の練習で知っておきましょう。
低ナトリウム血症になった時の症状
低ナトリウム血症になってしまうと、以下のような症状が出てきます。
【初期症状】
- 筋肉のけいれんや弱化
- 頭痛
- 無気力
- めまい・フラフラする
- 手足や顔の腫れ
- 吐き気・嘔吐
- 機嫌が悪い様子・機嫌の悪そうな行動をとる
- 急激な体重の増加
【重度な症状】
- 精神錯乱・興奮状態・ムードの変化
- ひどい頭痛
- 息が苦しくなる・呼吸困難
- 方向感覚の喪失・混乱
- 幻影をみる
- 瞳孔散大
- 発作・意識レベルの低下・昏睡状態
こう見ると、もう気づいた方もいるかもしれませんが、上記した「脱水の症状」とかぶるものがとても多いです。
体内の水分が足りなくなっても、水分を摂りすぎても、結果として現れる症状には同じようなものが多い。これが、その後の対処・ケアの混乱の原因です。
例えば、自分は水分が足りないから頭が痛いのか。それとも水分を摂りすぎて頭痛になっているのか。
おそらく出てくる症状は1つではないので、他にどんな症状が出ているのかや、今までの水分補給量を考えて、判断する必要があります。
「重度の症状」で挙げたような症状が出てきたら、すぐに病院へ行って(必要であれば救急車を呼んで)、一刻も早く点滴によって塩分を身体に取り入れる必要があります。
ちなみに、低ナトリウム血症に特有の症状は「体重の増加」「水分をかなり多く摂っていた」「手足の腫れ」「頭痛がどんどんひどくなる」です。
低ナトリウム血症についての記事を書きました。「運動誘発性低ナトリウム血症|水分補給は多ければ良いわけではない」もぜひお読みください。
いったいどれくらい水分補給すればいいの?
よく「◯◯分前に△△△mLを飲め」「運動中は◯◯分おきに△△△mL飲むべき」といったアドバイスを聞くことがあると思います。
そうやって決めておき、半ば強制的に水分を補給することで脱水を防ぐというのは、飲みすぎに注意すればとても良い考えだと思います。
では、科学的な根拠に基づいて、これくらいの時間運動をする場合はこれくらいの水分を補給するべき、という具体的な数値があるのかというと、ありません。
理由は、人によって飲むべき量が違うから。普遍的な、誰にでも例外なく当てはまる水分補給の量を示すのは残念ながらできないのです。
人によって異なるというのは、以下のような要素がそれぞれの人によって違うためです。
- 汗をかく量
- 運動をする環境(その日の天気・気温・湿度・場所など)
- 運動・練習の時間の長さ
- 運動強度
- 普段どれくらい水分を摂っているか(安静時・運動中)
- 暑熱馴化の具合(身体は暑さに慣れているかどうか)
- 身体の大きさ
「水分補給量の目安」を計算できるサイトを紹介した記事を書きました。「自分が摂るべき水分補給の量ってどれくらい?Hydration Calculatorで計算してみる」もご覧ください。
自分の汗のかく量を計算する
自分がこれくらいの時間運動をしたらこれくらいの汗をかく、ということを知っておくことで、しっかり水分補給をすることができるようになります。
自分がかく汗の量を計算する方法を簡単にお伝えします。
「運動前の体重」ー「運動後の体重」+「運動中に飲んだ水分の量」ー「おしっこの量」=『自分がかいた汗の量』
汗の量を計算するときは、計画的に行います。
まず運動前に体重を測って、記録。
運動中に飲んだ水分の量も記録する必要があるので、量がわかるように水分補給をしていきます(例. 1杯で200mL飲めるコップを使って何杯飲んだかを記録する、100mLごとに目盛りが付いているウォーターボトルを使って水分補給をする、など)。
もし運動中におしっこにいく場合は、できれば尿検査をするときのように一度自分の尿を何かに入れて、その量を記録できるとより正確です。
そして運動が終わったら、また体重を測ります。これらの数字を上の式に当てはめて出た数字が、運動をした時間でかいた汗の量ということになります。
この汗のかく量は、その日の気温・湿度・運動強度・運動した時間などによって変わってくるため、何度かこの計算を繰り返して(理想はシーズンごとに)、自分がかく汗の量をある程度把握できると良いと思います。
汗をかく量というのは人によって全然違います。いくら同じような体型をしているからといって、アイツがこれくらいだから俺も同じくらいだろう、のように推測するのはやめましょう。一般的に、18歳以上の人の汗をかく量は、1時間で少ない人は0.5リットル、多い人は同じ1時間で4リットルと、かなり差があります。
運動する時間の長さ
想像はつくかもしれませんが、運動をする時間が長くなればなるほど、水分補給の量は増やす必要があります。
一般的に、運動時間が1時間以内であれば、水のみの補給で充分です。
すごく暑い環境で運動をするときや、かなり強度の高い運動をするということでない限り、塩分・電解質・炭水化物などを摂る必要はありません。
1時間を超えるような運動量になる場合は、水分以外の摂取(塩分・電解質・炭水化物など)が必要になってきます。
身体の暑熱馴化
身体が環境の暑さに慣れることで、より汗をかくようになり(=体内に産まれた熱をどんどん体外に放散できるようになる)、また汗によって失われる塩分の量が減ります(=汗によって塩分が体外に出ていかなくなる)。
よって身体が暑さに慣れたら、今まで以上に水分を補給して、汗によって失われる水分を補給する必要があります。
暑熱馴化については「【部活動指導者必読】暑熱馴化〜夏の暑さに身体を慣らすための14日間〜」の記事で詳しく解説しています。
何を飲めばいい?水分補給に適した飲み物とは?
その人によって、運動中に飲みやすい飲み物というのがあると思います。ミネラルウォーターが好きな人もいれば、少し味がついた飲み物が良いという人もいます。
特に暑い環境で、しかも強度の高いような運動をする場合には、そんな時でも水分補給が進むような、自分の好きな飲み物をちゃんと準備しておきましょう。
一般的に運動中は、比較的冷たくて、少し味がついた飲み物を好む人が多いと思います。実際に、暑い環境で運動をしていた場合は冷たい飲み物の方がより多くの水分補給につながった、という研究結果があります。
糖分は3〜5%がベスト
運動中はミネラルウォーターではなく、少し味がついたものを飲みたいという人は多いと思います。
そして、スポーツドリンクを飲む人は多いと思います。スポーツドリンクにも様々な種類があり、様々な味のものがありますね。
基本的には自分の好きな味のもので良いと思いますが、より効率的に水分を補給する、ということを考えた場合は、運動中に摂る水分に含まれている糖分の量は「3〜5%」が良い、と今回の文献には明示されていました。
正確には「3〜8%」という表記ですが、「糖分の量が5〜8%含まれている場合、少し水分が体内に吸収されるスピードは遅くなる可能性がある」と明記されています。
長時間の練習で糖分を補給する必要がある場合は多めに摂りますが、水分補給という面を考えると、より吸収率の良い「3〜5%」という数字が目安になると思います。
代表的なスポーツドリンクの糖分量
一般的によく飲まれているであろうスポーツドリンクの糖分の量を調べてみました。
- アクエリアス:約4.6%(日本コカ・コーラ株式会社ホームページより)
- ポカリスエット:約6.5%(ポカリスエット公式サイトより)
- アミノバリュー:約3.6%(アミノバリュー公式サイトより)
- ヴァーム(VAAM):約0.7%(ヴァーム公式サイトより)
- GREEN DA・KA・RA:約4.9%(SUNTORYホームページより)
今回はあくまで「糖分(炭水化物)」の量のみに注目してみました。それぞれ他の成分の量が異なるため、自分の運動の種類・種目によりあったものを見つけられるといいですね。
カフェインは問題なし
よく「運動中にカフェインを含む飲み物は飲むべきではない」というのを聞いたことがある人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。摂りすぎなければ、運動前や運動中にカフェインをとっても、利尿作用が働くことはありません。
具体的な量を言うと、例えば70kgの人であれば、運動前や運動中にコップ1〜2杯のコーヒーに含まれるカフェインくらいの量を摂るくらいは問題ないようです。
「〜3mg/kg」くらいまでのカフェイン量であれば、飲んでも逆に脱水に向かうということはないようです。ちなみに一般的なコーヒー1杯(150mL)に含まれるカフェイン量は60〜90mgくらいです。
クレアチンも推奨量であれば問題ない
アスリートやトレーニング好きの方は、サプリメントでクレアチンを摂っている方もいるかと思います。そして、クレアチンを摂ると水分が失われる(=脱水状態になる)とか、筋肉がつりやすくなる、という話を聞いたことがあるかもしれません。
今回の参考文献によれば、クレアチンの摂取量をよほど増やさない限り(=推奨量を超えて摂取しなければ)、過度な脱水が起きることはないとしています。
グリセリンを使った水分補給はするべきではない
「グリセリンを使って水分補給をすることで、より体内に水分を蓄えることができる」と、グリセリンを薦めている人やサイトを時々見かけますが、今回の参考文献では、グリセリンを使った水分補給は推奨しない、としています。
理由としては「ネガティブな副作用(頭痛・フラフラする・吐き気)が起きる可能性がある」のと、「パフォーマンスが向上するというエビデンスが不十分」というものです。
アルコールは水分補給に適していない
これは別に言われなくても、という感じかもしれませんが。
今回の文献には「4%以下のアルコールを含む飲み物は、それを飲むことによって脱水を引き起こすということはない」と示されています。ですが、それ以上のアルコールを含む飲み物は過度な利尿作用を引き起こします。
「アルコール4%以下は脱水は引き起こさない」となってはいますが、やはり運動前後で飲むものとしては適していないので(アルコール飲料を飲むことは利尿作用以外にも多くの働きがあるので)やめましょう。
運動後は遅くても2時間以内に栄養補給
運動中に失ったものは、なるべく早く補充しましょう。車を運転し続けるとガソリンが減っていくように、身体も運動をするとエネルギーが失われます。
エネルギーを補給するために、そして疲労回復を促進するためにも、運動後なるべく早く食事・栄養補給(特に、グリコーゲンを補給するための炭水化物と、筋肉や組織の損傷の修復に必要なたんぱく質)をしましょう。水分補給ももちろんです!
塩分もしっかり補給
汗をかくことによって、水分とともに塩分も失います。よって運動後には栄養補給と水分補給に加えて、塩分の補給にも気をつけましょう。
摂りすぎは良くないですが、特にたくさん汗をかいた後は、食事に少し塩をふったり、普段よりも塩分を含むものをあえて食べる、といった工夫をして塩分を補給します。
また、運動前に塩分をしっかり摂っておくことで、血管が拡張して、より水分を多く体内に摂り入れることができるようです。
運動中に塩分や電解質を含む水分を摂ることも大切ですが、それ以上に、運動前に補給しておくことが熱中症の予防に大きく働くようです。
汗をかく量は人によって違う、という話は上記しましたが、汗による塩分の損失も、1時間に0.2gしか失わない人もいれば、1時間に7.3gも失う人もいるようです。
水分補給が足りているかどうかのチェック方法
水分補給が足りなくても摂りすぎても良くないという話をしましたが、ではどうやってそれをチェックすれば良いのでしょうか。
現実的で、誰でもできる、そして信頼できるベストな体内水分量のチェック方法を紹介します。
体重の増減をチェック
一番簡単で効果的で信頼できる方法として紹介されているのが「運動前後の体重の増減のチェック」です。
1)3日間連続で定期的に体重を測定
体重は食事や水分補給の量によって一日の中でも増減します。よって、まずは自分の基準の体重を知ることが必要です。
ポイントは「3日間連続で測定する」こと。自分の体重(=ベースライン)を知るうえで重要になります。
この期間はあまり激しい運動はせずに、しっかり食事をとり、こまめに水分補給も行い、身体を良い状態(=しっかり体内に水分が満たされた状態)にした上で、ベースラインを確認しましょう。
2)その体重を運動前後でできるだけ保つ
まず練習前。練習の前に体重を測定し、ベースラインの体重と比べます。もしすでにベースの体重よりも少なかったら、運動前から水分補給をしっかりして練習に入ります。
「ベースの体重より少ない=すでに脱水状態にある可能性」があります。
そして練習後。練習が終わったらまた体重を測定して、練習前の体重と比べます。練習前後で体重が変わっていないのがベスト。
目標は、運動前の体重から運動後の体重を引いた数値が「体重の1%以下」であることです。できるだけその体重が変わらないように、練習中こまめに水分を補給しましょう。
1%以上体重が減っていたら、運動中の水分補給が足りないことを表します(逆に増えていたら、水分の摂りすぎの可能性があります)。
3)毎朝体重を測る
運動前だけでなく、朝起きた時にも体重をはかりましょう。
毎朝なるべく同じ時間に体重を測定するというクセをつけることで、朝の時点から体内の水分量をチェックすることができます。
もし脱水状態であれば、運動を開始するまでにしっかり水分を補給しておきましょう。
特に夏の練習では、選手たちが好きな時にいつでも体重を測れるように、体重計を用意しておきましょう。
トレーナーがいて、選手たちの体重管理をできればベストですが、現実的には難しい場合も多いと思います。選手たちには必ず練習前・練習後(長い練習の時は練習中も)に体重をはからせて、増減がなるべくないように水分補給をさせることを意識させましょう。
おしっこの色をチェック
以前「おしっこの色チェック(以下にリンクあります)」についての記事を書きましたが、やはり最新の研究でも、おしっこの色を見ることは自分で簡単に現在の体内の水分量をチェックする有効な手段である、ということが示されています。
今回の研究にはさらに、「朝起きて最初にするおしっこの色をしっかりチェックしましょう」ということが明記されています。
詳しいおしっこの色の見方については以下のリンクの記事を見ていただきたいですが、朝起きて最初のおしっこが黄色かったり、茶色がかっていたら、身体は脱水状態にあります。
運動を始める前までにおしっこの色が「透明〜薄い黄色」になるよう、朝から積極的に水分補給を行いましょう。
「おしっこの色を見れば脱水状態かどうかがわかる」の記事もぜひお読みください。
のどの乾きをチェック
人の身体はうまくできていて、体内の水分量が足りなくなると喉が乾いて、水分を摂りたくなります。つまり「のどが乾いた時にはすでに脱水が始まってしまっている」ということになります。
「のどの乾き」は、体重の2%の量の水分が体内から失われるとより促進されます。
上記していますが、体重の2%の水分が失われると、パフォーマンスレベルが低下していき、体内の熱を体外に放出する機能も低下してきて、すぐに疲れるようになってしまうなど、様々な支障が出てきます。
よって特に、常に100%のパフォーマンスレベルで争わなくてはならないアスリートは、のどが乾いた時点ではもうパフォーマンスレベルは低下してきていると思った方が良いので、のどが乾く前から、こまめに水分補給をすることをオススメします。
「のどが乾いたら水分をとる」ようにしていると、失った水分の3分の2ほどしか摂れない、という研究報告があります。
よって、喉がかわいたら水分を摂るのはもちろんのこと、のどがかわいてないから大丈夫とは思わず、のどがかわいていなくても少しずつこまめに摂ることを意識して行いましょう。
まとめ
とっても長くなったので、要点をおさらいします。
- 運動中は、汗をはじめとした水分の損失が「体重の2%以下」になるように、こまめに水分を補給することで、自分のパフォーマンスレベルを低下させることなく、安全に運動・スポーツを行うことができる
- 水分の摂りすぎは禁物。運動を始める前よりも体重が増えることのないように、少しずつ、こまめに、適度に水分補給をすることが大切
- 長時間にわたって運動やスポーツを行う場合は、パフォーマンスレベルをしっかりと維持するために、摂る水分に炭水化物(糖質)や電解質が含まれていると良い
- 補給する水分は、冷たく、塩分など少し味がついていると、夏の暑い環境でも水分の補給がすすみやすい
- トレーナーや運動指導者は水分補給の重要性をしっかりと認識し、それを選手たちやその両親など、その運動・スポーツに関わる全ての人に伝える必要がある
ぜひ、参考にしていただけたら幸いです。
[…] 水分補給に関しては、たっぷりなボリュームで「【まとめ】最新の科学的根拠に基づく熱中症予防のための水分補給」の記事に書いたので、詳しくはこちらをご覧いただきたいのですが、熱中症になる原因の1つが「脱水(=体内の水分が足りなくなること)」です。脱水状態にならないように、こまめに水分を補給しましょう。水分を補給することで、体温を下げる効果もあります。 […]