基本知識

熱中症で最も多いのが熱疲労!原因と症状から見る対処法とは?

熱疲労_消防士

大きく分けて4種類ある熱中症の中で、ここまで「熱痙攣」と「熱射病」についての記事を書いてきましたが、今回は「熱疲労」についてです。

それぞれ「熱痙攣とは?エビデンスで見る熱痙攣の原因・症状・処置・予防法」「熱中症で一番重度な『熱射病』の見極めと治療法を徹底解説!」の記事もぜひご覧ください。

熱疲労は、運動中に最も起きやすい熱中症と言われています。熱疲労は、適切に対処すれば全く問題はありませんが、少しでも応急処置や対応が遅れてしまうと、症状がどんどん悪化し、熱射病になってしまう可能性もあります。熱射病は死に至ってしまうこともあるとても怖いものです。

今回は、特に夏の暑い環境下で運動をする機会がある人には特に読んでいただきたい、熱疲労になってしまう原因、なってしまうと現れる症状、なってしまったらするべき応急処置について、細かく解説していきます。


>>参考にした論文はこちらです。

ACSMPSスクショ

Exertional Heat Illness during Training and Competition|American College of Sports Medicine
American College of Sports Medicineが2007年に発表した、運動中・スポーツ中に起こる熱中症についてのPosition Standです。

スクショ_NATA熱中症

National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Exertional Heat Illnesses
NATA(全米アスレティックトレーナー協会)が2015年に発表した熱中症に関するPosition Statementです。この熱中症ドットコムの多くの記事で参考文献として使われています。トレーナー必読です!

熱疲労とは?

熱疲労_汗_ジョギング

熱疲労になるとまず大前提として、暑い環境下でそれ以上運動を続けることは難しくなります(危険になります)。具体的に言うと、心血管系・循環器系の機能がうまく働かなくなり、低血圧やエネルギーの枯渇、さらには中枢系の機能もうまく働かなくなっていきます。

このような状況になぜなるのかと言うと、一番の原因は「深部体温の上昇」です。

以前の記事「熱痙攣」や「熱失神」のところでも出てきましたが、やはり夏の暑い環境下で運動をしていると、体内に熱がたまっていき、体温が上昇してきます。ここで汗を効率的にかくことによって、体内の熱を体外に放散し、体温が上昇しすぎることを防ぐのですが、この体温調節機能が働かなくなってしまうと、体温が上がり続けるために上記したような状況となってしまいます(=熱疲労になってしまう)。

熱疲労の原因|なぜ熱疲労になってしまうのか?

熱疲労になってしまう一番の原因としてあげられるのは「気温・湿度ともに高い日」です。上記したように、体温調節機能が働かなくなり、深部体温が上昇してしまうことによって熱疲労はおきます。特に運動中に体内の熱を体外に放出する一番の機能は「汗をかく」ことなのですが、湿度が高いと汗がうまく蒸発してくれません(湿度が高い=空気中に水分がたくさん含まれているため)。

ただ汗をかくだけでは熱は放散されず、汗が空気中に蒸発することによって、その気化熱で体温は下がっていくため、汗が蒸発しないと、ただ体内の水分量が減ってしまうだけとなってしまいます。すると体温は下がらず、しかも脱水状態になってしまい、熱疲労となってしまうのです。

体温調節機能について「ヒトが持つ体温調節機能のメカニズム|熱の移動と放散で体温を下げる」の記事で詳しく解説しています。

また、これは他の種類の熱中症のところでも毎回出てきていますが、やはり「身体が暑さに慣れていない(=暑熱馴化ができていない)」人は、熱疲労になりやすいです。「暑熱馴化ができていない=まだ身体は暑い環境下でうまく体温を調節できない」ということなので、熱疲労だけでなく、他の種類の熱中症にもかかりやすくなってしまいます。

暑熱馴化については「【部活動指導者必読】暑熱馴化〜夏の暑さに身体を慣らすための14日間〜」の記事で。

この暑熱馴化ができていないことに加えて、以下のような条件が重なると、かなり熱疲労になってしまうリスクが高くなります。

  • BMI(Body Mass Index)が27以上
  • 水分不足(=脱水状態)
  • 気温33℃以上で風があまりない日(<2.0 m・s)

特に「脱水」と「BMI>27kg・m」は、熱疲労になるリスクファクターとして、様々な研究で証明されているようです。

熱疲労になると現れる症状とは?

熱疲労_顔_青白い

以前「熱射病」についての記事を書きましたが、熱射病と熱疲労の違いの1つは「体温」です(ここでいう体温とは、深部体温のことを指します)。一般的に体温が40.5℃以下であれば熱疲労と言われ、体温が40℃以上であると熱射病と呼ばれます。

さて、熱疲労になってすぐは、以下のような症状が出てきます。

  • 極度な疲労
  • めまい
  • 頭痛
  • 血圧が下がる
  • 脈や呼吸が速くなる
  • 汗をたくさんかいている
  • 脱水(=体内の水分量が足りなくなる)
  • 顔が真っ青(血の気が引いている)

更に熱疲労が進行してくると、以下のような症状も現れます。

  • 頭や首が熱い
  • 悪寒(寒気がする)・鳥肌が立っている
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 興奮している・怒りっぽくなる・イライラしている
  • うまく動けない(筋肉をうまく動かせない)

重度になっていくと、幻覚・異常行動・精神状態の変化・方向感覚の喪失・昏睡状態といった症状が出ることもあり、熱射病になってしまうこともあります。

現実的にはなかなか難しいとは思いますが、やはり直腸温(=深部体温)を測定して、熱疲労なのか熱射病なのかをしっかり見極めて、その後の応急処置や対応を行うことがベストです。

熱疲労になってしまった時の応急処置と対処法

熱疲労_休息_挙上

熱疲労になってしまったら(熱疲労だけに限らず熱中症になってしまったら)、まずは運動(もしくはその時している活動)をやめて安静にすると思いますが、その後何をすれば良いのか?熱疲労に対する応急処置は以下の通りです。

迅速に適切にケアをすれば、ほとんどの熱疲労はその場で症状はよくなり、病院に行かなくても大丈夫なことが多いようです。無理せず、焦らず、適切な対処を心がけましょう。

衣服や防具を脱ぐ

熱疲労に限らず、熱中症になったらまずは涼しい場所(日陰や室内の冷房が効いている場所)に移動すると思います。移動した後、身につけている防具や着ている衣服を脱ぎましょう。なるべく肌を露出させることで、気化熱による熱の放散を目指します。

できるだけ早く体内の熱を体外に放出したいので、扇風機などを使って風を直接肌に当てて汗の蒸発を促進させたり、氷や冷やしたタオル、水風呂(氷風呂)などを使ってアイシングをして体温を下げていきましょう。

氷風呂が最も効果的に身体を冷やす方法ですが、なかなか準備することが難しい環境の場合が多いです。その場合、スポーツチームや部活動では「クーラーボックスに水と氷を入れ、その中にタオルを入れておく」のがオススメです。体温を下げたいときは、その冷やしたタオルを全身にあてましょう。

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仰向けに寝て両足を挙上する

仰向けに寝て、両足を何かの上に乗せたり壁を使って心臓よりも高い位置に置きましょう。末端の足から心臓への血流の戻りを促進することで、回復を待ちます。

もしトレーナーや指導者として熱疲労になってしまった人を観察している場合は、意識・脈・呼吸・血圧といったバイタルサイン(=生命に関わる徴候)のチェックは常に行いましょう。少しでも悪化してきたらすぐに救急車を呼ぶ準備もしておきましょう。

なかなか回復しない場合は病院へ

応急処置を始めてから30分ほど経っても全然回復しない場合、もしくは応急処置をしてもどんどん症状が悪化している場合は、すぐに病院へ行きましょう(もしくは救急車を呼ぶ)。

また、もし環境が整っている場合は深部体温をすぐに測定しましょう。その時点で40.5℃以上あればそれは熱射病なので、一刻も早く救急車を呼びましょう。

水分補給

熱中症の話をすると必ず出てくるのが「水分補給」ですね。熱疲労の応急処置としても、もちろん水分補給は重要となります。理由としてはやはり、体内の水分量が足りなくなることで血液量が減ってしまうので、体内の熱を効率よく体外に放散できなくなってしまいます。

水分補給については「【まとめ】科学的根拠に基づく熱中症予防のための水分補給」でかなり詳細に解説しています。

これも他の熱中症の話の中で出てきますが、意識がなかったり、水分補給をしてもすぐ吐いてしまったり下痢がひどいという場合は、いくら水分を口から摂っても体内の水分量を増やすことはできません。無理に口からの水分補給はやめて、病院へ連れて言って点滴で水分補給をする必要があります。

熱疲労になった日は絶対に安静

運動中に熱失神や熱痙攣になってしまった場合、症状が回復したら再び運動を開始しても良いという話をしました。ですが、熱疲労になってしまった場合は、たとえ症状が回復したとしても運動を再開するのはやめましょう。

回復した後も体内の水分量をチェック

これも熱疲労に限らず、熱中症になってしまった後は必ず意識したいこと。たとえ回復したと思っても、少し時間が経って再び体調が悪くなってしまうことは大いにあります。よって、熱中症になってしまってから1〜2日間は、体内の水分量は常にチェックして置きましょう。

体内の水分量(=脱水しているかしていないか)を簡単に知る方法として「おしっこの色をチェックする」ことがとても有効です。「おしっこの色を見れば脱水状態かどうかがわかる」の記事でぜひ確認してみてください。

まとめ

熱疲労についてまとめました。冷静に対処すればまったく問題ありません。起きてしまう原因、現れる症状、起きてしまったときの対処法をしっかりと頭に入れておきましょう。

また、事前の準備も大切です。熱疲労が起きてしまったときに迅速に対処できるよう、必要な道具はちゃんと準備しておきましょう。

About the author

ATSUSHI

2013年からBOC−ATC(米国公認アスレティックトレーナー)として活動中。現在は外資系企業ビル内フィットネスセンターで運動指導・健康指導を行うとともに、ストレッチポール公式ブログの記事執筆や、GAP英語勉強会講師なども行う。

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